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「お嬢様!!!」
ジョージ様の罵声を静かに受け止めていると、私を追いかけてきたマギィが叫びながら私を庇った。
「ジョージ様、仮にも婚約者であるアリィ様に対し何をなさっているのですか!」
「うるさい!メイドごときが邪魔をするな!俺は今コイツを躾けているんだ!」
ジョージ様は怒りを鎮める事が出来ないのかマギィに向かって手を振り上げた。
「マギィ!!」
咄嗟にマギィを庇うが振り上げられた手は降りてこなかった。
ゆっくり目を開けるとそこには
「何をしている?」
マーレン様がジョージ様の手首を掴みながら立っていた。
「あっ、あの・・」
「レッド、アリィの様子を」
「アリィ嬢、大丈夫ですか?立てますか?」
「レッド様・・ありがとうございます、大丈夫立てますわ」
私はマギィとレッド様の手を借りながら立ち上がる。マギィは今にでも泣きそうな顔で 氷を持って来ます! と言って走って行った。
レッド様が私の左頬に軽く触れると
「痛っ!」
ピリッとした痛みが走った。
「何故こんな事に?」
「私は悪くない!そう、この女が私という婚約者がおりながらも侯子様と・・躾ですよ、躾」
「自分の事は棚に上げてか?」
「侯子様はまだ婚約者がいらっしゃらないでしょう?相手の態度でこちらの評判が・・いててて!」
マーレン様はジョージ様の話を最後まで聞く気にならなかったのか、途中で更に手首を捻り上げた。
「「アリィ?!」」
「アリィお姉様!」
騒ぎを聞き付けたお母様たちが私の顔を見るなり叫ぶ。打たれた時は気付かなかったが口の中が切れたのか、唇に血が付いていたようだ。
「ジョージ様、アリィが病み上がりだと知っておられたでしょう?なのに何故こんな・・」
お姉様がジョージ様に詰め寄る。
「それは・・コイツがグラビティ侯子に失礼な態度を取ったので・・」
「だからと言って顔を叩くだなんて・・」
「私・・暴力を振るう男の人は嫌です!お父様だって口は悪いけど一度も手を上げた事ありませんわ!」
「トゥーエ・・そんな・・」
お母様はとにかく部屋に入りましょう と言って私の腕を引きながら扉を開けた。
流石にレッド様は入れないので ありがとうございました。 とお礼を言ってお母様、トゥーエと共に自室へと入った。
マーレン様とは目が合ったが直接お礼を伝えるのは次に会った時にしよう。
部屋に入る直前
「ジョージさん、この件は主人に任せますが私としては黙っておける事ではありません。貴方の今までの態度も含めご両親にはハッキリとお伝えしますから」
そう言い残したお母様は静かに扉を閉めた。
これでジョージ様との婚約も解消されるのかな?そしたらまた違う方と婚約するのかな?
頬を冷やしながら今後の事を考えていると
「アリィお姉様にジョージ様は合わないと思ってましたの!」
突然トゥーエが言い出した。
「だってあの方、私の護衛のくせに馴れ馴れしいし、そもそも護衛のくせに何故アリィお姉様の婚約者なんですの?」
「「えっ?」」
トゥーエの言葉に思わずお母様と声が被ってしまった。
「トゥーエはジョージ様の事、護衛だと思っていたの?」
「えっ?違うんですか?だってあの方いつも 僕が君を守るからね! って仰ってたからてっきり・・」
姉の婚約者を妹の護衛に付ける家はありませんよ・・
これは私とお母様の心の声だ。
「ああ、アリィ大丈夫?この件はハッキリとあちらの家に講義します。大丈夫よ、侯子も見てましたから何かあれば力になってくれます」
「それにしてもジョージ様は気付いていなかったのかしら?」
「「何を?」」
トゥーエも えっ? て顔をしながら
「あらだって、いつもアリィお姉様のお側にいたではありませんか!侯子は・・女性と言えばお姉様のお側にしか立ちませんでしたよ?周りも上司と部下の関係をご存知だったから噂にはなりませんでしたけど・・」
侯爵家の嫡男で次期侯爵。今だに婚約者もおらず浮いた噂もない優良物件は年頃の娘を持った家門からすれば喉から手が出るほど縁付きたい相手。
そんな相手の側には常に婚約者にも相手にされない、冴えない子爵令嬢・・か。
「ですがこれでやっと侯子も動けますわね」
そう言って入って来たのはお姉様だ。
「お父様にもしっかりと伝えて来ましたわ!ああアリィ大丈夫?可愛い顔にこんな・・」
ん?今お姉様は何を言った?
「本当にですわ!アリィお姉様は私たちとは違う可愛さがお有りなのに、何故誰も気付かないのかしら!」
「あらトゥーエもそう思ってたの?でも大丈夫よ!気付いてる殿方はいますからね」
姉妹で何やら聞き慣れない会話をしているその横で、お母様は複雑そうな顔をしている。
そう、お母様の表情が正解なのだ!お母様の家系はとにかく美形揃いなのだ。
何代か前の伯爵夫人が王家の血を持っていたからなのか?ただ悲しいかな子供にはあまり恵まれない家系だった。
その為三人の子を産んだお母様はとても驚かれた。ちなみに王家の血持った夫人は一人娘を産んでいる。
その後もだいたい一人しか子が恵まれておらず、お母様の実母もお母様しか産んでいない。
本来ならお母様が後を継ぐはずだが、お父様との大恋愛の末子爵家へと嫁いで来たと聞いた。
子爵家は遠縁の子を養子に迎えている。
なので王家の血を継いでいるのは私たち三姉妹となった。
ジョージはロード家では婿として扱われていた。
その為少しの姉妹への距離感に対しても多めに見られており、それを誤解してトゥーエに近付いていた。
痛い男である・・




