14 マーレン目線 3 →アリィ
レッドの家はグラビティ侯爵家の某系で、代々侯爵家の諜報員として仕えている。レッドはその嫡男で次期子爵だ。
俺と歳も近いためこうして仕事でも常に俺の側で働いている。
そしてスレント子爵家の諜報員たちは何故か王家の諜報員とも繋がりがあり・・
時々王族のスキャンダルを早めに知らせてくれている。そのおかげで大きくなる前にグラビティ家が収めることが出来ており、王家からも信頼されているのが現状だ。
「ちなみにアリィ嬢の体調は戻り、今はお庭の散歩をされている様です」
「・・・お前の所の者はロード邸に入り込んでいるのか?」
恐る恐る聞くとレッドは口角を上げた。
まぁ腕もそれなりに立つ者だと思うから、逆に安心ではある。
「では、ロード邸に足を運ぼうか。もちろんチェリー嬢にでは無くアリィへの元へ」
レッドは後の二人に手で合図を送ると
「では私もお供させていただきます」
とソファーから立ち上がった。
庭のベンチで休んでいると何やら玄関が騒がしい。メイドのマギィも気付き
「確認して参りますね」
と屋敷の方へ向かって行った。
どうせお姉様かトゥーエにだろう。そう思って少し肌寒くなってきたなぁと考えていたら、
「そろそろ日が沈む。また体調を崩すから中に入った方が良い」
聞き慣れた声と共に体へブランケットが掛けられた。振り返るとそこにマーレン様が立っていた。何故かその後ろにはレッド様も・・
「あの・・マーレン様?」
「ああ」
「お姉様なら屋敷の中に・・」
あっ!と思った時には口から出ていた。
常に私に声を掛ける男性は、お姉様かトゥーエに繋いで欲しい方ばかりだったから・・私にとってはそれが日常だった。
だから考える前に口から出てしまった。
「君は昨日私が言った言葉を忘れたのか?」
マーレン様は優しく言うと私の手を取り・・口付けた。私は驚き思わず手を引こうとしたがマーレン様がそれを許さなかった。
「とりあえず中へ入ろう」
そう言うと私をエスコートするかの様に歩き始めた。レッド様も嬉しそうに微笑まれている。
私は胸のドキドキを押さえながら応接室まで歩いて行く。と、玄関から走って来る音が聞こえてきた。
「グラビティ侯爵家のマーレン様が来ていると!直ぐにチェリーを呼んで来い!」
マーレン様が来ている事を知ったお父様の声だった。
ああそうだった・・
私がマーレン様の腕から手を離そうとしたが、それを許さなかったのはマーレン様だった。
「あの・・マーレンさま・・」
「これはこれはグラビティ侯子、留守にしており申し訳ありませんでした!」
お父様の声に私の声はかき消されてしまったが、私の手は離さなかった。
当然お父様にも見られた。
「アリィお姉様、お身体の具合はよろしいのですか?」
心配そうなトゥーエの声に顔を上げるとジョージ様の姿もあった。今日もトゥーエの側にいる私の婚約者。
ジョージ様はマーレン様と私の姿を見て眉間にシワを寄せた。自分は良くても私はダメなのだとその顔でわかった。
でも相手がマーレン様だから何も言えないのね。
「「 チッ!! 」」
後ろから二人同時に舌打ちが聞こえた。
おそらくレッド様とマギィだろう・・
私はマーレン様の腕から手を下ろすと
「お父様お母様それからトゥーエ、お帰りなさいませ。上司であるグラビティ侯子がお見舞いに来てくださいましたの」
そう言うと両親はホッとしたような顔をした。
きっとマーレン様が私では無くお姉様に会いに来たんだと思いたかったのだろう。
「そうだったのですか!それはわざわざありがとうございます。アリィ、ちゃんとお礼を言って部屋に戻りなさい。侯子はこちらへ、今チェリーが来ますので」
とてもご機嫌なお父様はとにかくお姉様に会わせたいらしい・・
私はそんな空気を読んでその場を離れようとした。
「マーレン様、今日はありがとうございました。明日は登城出来ますので」
そう言ってマーレン様とレッド様に頭を下げてその場を離れた。
「おい!」
自分の部屋へ入ろうとした時、後ろから声を掛けられて振り返るとそこにはジョージ様が不機嫌な顔をして立っていた。
「ジョージ様、いかが・・!!」
返事をしようとした瞬間すごい力で身体を扉に押さえつけられた!
「痛い!ジョージ様離して!」
「何色目使ってんだよ!パッとしない顔のくせに!」
「別にわたしは・・」
「冴えない顔で見られても気持ち悪いんだよ!何でお前なんだ!俺はお前なんかよりトゥーエの方が良かったのに!!」
ジョージ様に好意は持たれて無くても、いずれは夫婦になるのだから・・と、ジョージ様がトゥーエに好意を抱いていても叶わないと知っていたから・・
いつかは私を見てくれると思っていたのに・・
「お前の涙なんて見せられても何とも思わないし、むしろ不愉快でしか無い!グラビティ侯子と一緒に仕事をしているからと調子にのるなよ!所詮チェリー嬢に近付く為に利用されているだけなんだからな!」
わかってる・・そんな事言われなくても、散々言われてきた事だもの・・
でもなぜ貴方に言われなければいけないの?
「トゥーエは俺の気持ちに気付いてるはずなのに!」
「お願いです。トゥーには手を出さないで!」
「うるさい!!」
ジョージ様が叫ぶのと同時に左頬に痛みが走ったと同時に私は勢いで床に倒れ込んでしまった。
それでもジョージ様の怒りはおさまらず
顔が冴えないのなら愛嬌を振りまけ!
とか、
トゥーエの愛らしさを見習え!
とか、無理な事を言ってきた。私はただジョージ様の罵声を浴びながらこの方への希望を捨てたのだった。




