10 マーレン目線2
メイドに案内された場所はアンドリューの自室だった。
「やぁマーレン、いらっしゃい」
「・・お前ここで何してるんだ?」
「もちろん君を待って」「る訳無いよな?」
そう言うとアンドリューは ヘヘッ と笑った。
どうやら窓から外を覗いていたようで自分も窓の近くに寄る。
「誰か気になる人でもいたか?」
アンドリューは そんな人いないよ と言ったが目が窓から離れていない。
「そんな目で見ていれば嫌でも気付く。俺の知ってる人か?」
ゆっくりと顔を動かすとアンドリューは俺の目を真っ直ぐ見ていた。
「まさ・・か、チェリー・ロードか?」
「だか彼女は君の・・」
「いやいや待て待て、お前俺の想い人知ってるよな?なぜその相手が彼女の姉になるんだよ!」
「仲睦まじそうに入って来たじゃないか・・」
俺は深く息を吐くと 外へ出るぞ! とアンドリューを誘った。
この男伯爵家の次男だが父親の仕事を引き継ぎ、今は外交官として働いている。
ついこの間国に帰って来たばかりだ。
こいつも俺と一緒で周りがうるさく、今日のお茶会も実はこの男の相手探しの為に開かれたのだ。
庭園へ出ると令嬢たちの視線が痛い。それもそのはず、ここに優良物件が二人も揃っているのだ。
伯爵夫人も嫌がっていた息子が出て来た事に喜んでいる。夫人は俺たちの近くに歩み寄り
「皆さま!本日はお越しくださりありがとうございます。女性だけのお茶会と思いましたが・・」
と、挨拶を始めた。
どうやら息子アンドリューだけでなく、俺の相手探しも始めるようだ。
そんな様子を少し離れたテーブルから見ているチェリー嬢の目が、俺では無くアンドリューへと向いていることに気付く。
( わたくしにアンドリュー・ファーレン様を紹介して頂きたいのです)
あの夜、彼女が俺に近づいた理由だった。
( 貴方もご存知かと思いますが、アリィは我が家に縛られる様な子ではありません)
(だが彼女以外に誰が継ぐと?)
(末妹のトゥーエですわ)
(・・・)
(もちろんあの子だけでは無理ですわ。かと言ってジョージ様も無理ですわ。あの方は努力が出来ない方ですもの。アリィと一緒になったら我が家が傾く事が想像出来ます)
それは貴方様もご存知なのでは?
その為このお茶会に彼女を連れて来たのだ。
夫人も お嫁さんにしたい令嬢 の彼女を気に入った様だし後は二人に任せれば良い。
(お互いに気があるのなら何とかするだろう)
問題があるとすればアンドリューが伯爵家の次男で、後を継ぐ爵位がない事だが外交で腕を上げているし第二殿下も
アンドリューが結婚すれば爵位を与えられる。
と言っていたから大丈夫だろう。
見れば夫人の方から彼女をアンドリューに紹介している様だ。
しかし・・まだまだ俺も人を見る目を養わなければと考えさせられた。
ロード家の三姉妹。
長女チェリーを一言で例えるならば(美)
仕草や言葉遣いも勿論だが、会話や容姿の全てが美しい。
一見すると近寄り難く感じるも、会話をすれば楽しく内容も学があるため年齢関係なく魅了される。
三女トゥーエは(愛)
愛らしい容姿を始め愛嬌のある笑顔、話し方。行動も全て計算されているのでは?と思うほど、可愛らしい。( 周りの男談)
実際に性格も良く異性同性に関係なく好かれている。
そして次女のアリィ。彼女は(賢)
上下姉妹に挟まれあまり目立つ女性では無いが、努力家で一度頭に入れた事は忘れない。
数字にも強い為に領地の経営や屋敷の運営も両親から任されてしまったのだろう。
実際に彼女が関わるようになってからの子爵家の納税額も上がっている。
「マーレン様。あちらでお話でも・・」
「まぁ、馴れ馴れしい!貴女では相手にならなくてよ!マーレン様わたくしと・・」
許しても無いのに名を呼ぶような女などは問題外だ。
「今から仕事に向かいますので・・」
俺の目的は終わった。
今から向かえばまだ間に合うだろう。
俺はアンドリューと夫人に挨拶をすると、直ぐに愛馬に跨り王宮へと向かった。




