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86.さる井戸端会議にて
「…ですって、お聞きになりまして?」
「まあ、ホント?意外ですわね~」
「そういえば、『あの』水の魔術師が近頃見かけられないと聞いたわ」
「変なこともあるものねえ、あの方なら研究所にこもりっぱなしと思っていたけれど…」
「それが、旅に出たとかなんとかって!」
「まあ、きっと研究の旅ね」
「学者魔術師とか言われるぐらいだから、魔術に縁のある地にでも行ってるんでしょうね」
「あの方なら心配いらないし、じきに帰ってくるでしょう」
「そうね~。あ、ところで、近くの森に高貴な方が入り浸ってる、って話、知ってらっしゃいます?」
「私聞いたことありますよ。王女様かもしれない、って」
「まさか!妹君様はまだ教育の途中でしょうし、姉君様は魔術師団の調練、訓練でそれどころではないわよ」
「ですわよね。まあ噂ですしね」
「…でもあの森も、ここのところ平和になったものよね」
「確かにね。魔力持ちの獣が少なくなって、安心だわ」
「あらやだ、そろそろ家で子どもたちがお腹をすかせる頃ね。じゃあ皆さん、またお話しましょう」
「そうね。では奥さん、またね~」