78.ノーベルト日記·9
☆月#日
東部大陸での売上は上々、その利益の一部で東部特有の道具などを買った。
ついでに自分の懐を涼しくして、妻と娘にも魔法具も購入、気に入ってくれればいいんだが。
結局主様らしき人物に会うことはなかった…と思う。
まさかあの子じゃあないだろうが、どうにも最後に引っかかってしまっている。
しかし、主様の姿の代わりに興味深い話を聞いた。
この東部大陸で主様に仕えた初めての者たちは、主様から何がしかの力を与えられ、その子孫で且つこの東部大陸で育った者は、この大陸にいる時だけ、主様が分かるらしい。
本当かどうか怪しかったのだが、なんとつい最近とある町の祭に現れたというのだ。
なんとも驚いたが、本当に見た時に分かる人は分かったらしい。
いつかその時に立ち会えればいいが…まずは商売の成功に尽力しなければ。
…そういえば妻はここの生まれだが、もしかしたら分かるのだろうか?
■ □ ■ □ ■ □
「ただいま、帰ったぞ」
「ん、お帰りなさい、あなた」
「…お帰りなさい、父様」
「ん、元気そうで何より。ほれ、お土産はコレだ」
「あら、綺麗なネックレス。…もしかしてこれ、魔法具なの?」
「ああ、護身用兼牽制用のな。…他の野郎に言い寄られたりしなかったか?」
「ふふ、私はあなた一筋よ♪」
「…そうか、いつも家を空けてすまん」
「いえいえ、あなたが頑張ってるから、私も頑張れるのよ」
「…ありがたい限りだ」
「父様…私には無いのか?」
「勿論ある。…これだ」
「む、これは…風精の腕輪?」
「その通り。着けてると風の加護が受けられる。但し使い方はお前次第だ」
「…なるほど。ありがとう、父様」
「気に入ってもらえればいいがな」
「…それで、あの…父様…今度近衛騎士団に入団することに、なったんだ…」
「おお、本当か!よしよし、よく頑張ったぞ!」
「…うん♪」
「ふふ、良かったわね。ずっとお父さんに言いたくてうずうずしてたのよね」
「あぅ…うん…」
「だが、まだまだこれからだぞ?」
「ああ、近衛として恥じない働きをしてみせる!」
「その意気だ。…さて、今日は俺が飯を作るぞ」
「! 父様、今日はどこの料理だ!?」
「東部大陸のだ。まあ母さんの作ってくれる味付けとそう変わりないと思う」
「でも楽しみよ、ずっとあっちの料理は作ってなかったもの」
「なら頑張るとしますか。ネル、テーブルの準備を頼む」
「分かった、父様」
「レシーナは下ごしらえを手伝ってくれ」
「はい、あなた」
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王都ディバイセクルの居住区にある家で、商人隊の隊長は数週間ぶりの家族団欒を満喫しています。
その後娘の修練の相手をして、成長に頬を緩めていましたとさ。