75.ノーベルト日記·6
戦争は続いた。
その大陸で最も長く続いた戦争だった。
民は疲弊するものの闘志は失われず、頭首は疲れ知らずのまさに一騎当千の戦いを繰り広げる。
両者は拮抗し、6年の間決着はつかず、次第に焦りが見え始めた。
そして、2人は決断を下す。
次で全てを決しよう、と。
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「確かその戦がこの大陸で最後の大規模な戦争だったな」
「うん、それからは村や町の単位での下克上だけになったからね」
「はあ~、大陸規模なんて想像出来ねえな…」
「そういや、村単位になって不都合は無かったの?」
「最初は主様の提案した仕組みに慣れるのに苦労したみたい。今は浸透してるから大丈夫だね」
「1000年近く続いてるとなると、相当ここの人たちに合った仕組みなんだろうな」
「だが細かいところじゃ色々あるから、そこは各町村の自由になってるんだ」
「なるほど、その土地の柄もあるんすね」
「でも、細かい違いが村ごとにできちゃって意見の対立なんてしょっちゅうなんだ。作物と道具の交換なんて、一度意見が合わないと大体決闘騒ぎになるね」
「まあその精神は商人…見習いだからわからなくもないけど…」
「いや、場所によっちゃ材料がほとんど無い道具もあるし、水引の時もひどいもんらしいぞ」
「…怖いっすね」
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少女の話に商人隊の見習いたちが聞き入っている間に、日は高く昇っていきます。
隊長はため息をついてから宿の受付に行って、延長の願いを出しましたとさ。