74.ノーベルト日記·5
昔々、この大陸は力によって統治されていた。
武力、知力、統率力、財力…様々な力を用いて、兵たちは戦い、そして幾つかの集団を形成していった。
その集団の中でも日常的に下克上は行われ、頭首を変えながら時には他の集団と混ざり合い、いつしか2つの集団によって大陸は二分された状態になった。
どちらの頭首も思った、ここで戦い、勝った者こそ、大陸を治めるに相応しい覇王である、と。
そして準備を整えた2つの集団は、戦争を始めた。
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「…ここまでは知ってるよね?」
「ああ。この東部大陸の歴史の初期、大体1000年程前と言われるやつだな」
「へえ~、今は落ち着いて見えるところもあるのに…」
「いや、その実弱肉強食主義はきちんと根付いて、受け継がれてる」
「え、ホントっすか、ノーベルトさん?」
「そうだよ!1ヶ月に1つか2つぐらいの村でも、村長が下克上されるんだから!」
「え、そんなに?それでやってけるのか?」
「基本的な仕組み自体は作られていて、それに基づいて行われるから根本的には変わらないんだ。本当にそこまで変えるつもりなら、最高地位にいる主様を倒さなきゃならん」
「それに下克上をやった後は村人たちから試されることになるんだよ?駄目だと思われたらすぐにまた戻されたり地位を取られたりするの」
「なんとまあ…確かに根付いてるなあ」
「まあ、だからこそどの村も差はあれど発展はするんだよ。自然と能力のある者が治めることになるから、その移行ががっちり認められてるのも助けてうまくいってるんだ」
「なるほど…荒っぽいけど、その仕組みなら良くはなるな」
「…でも、欠点だってあるんだけどね」
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少女と商人隊の隊長によって、話が進められていきます。
隊長は、まだまだ未熟か、と思いながら少女の話に耳を傾けるのでした。