73.ノーベルト日記·4
☆月※日
今日は異国での朝だ。
船酔いに対しては、毎年のことだからある程度は耐性がついたらしい。
にしてもこの国は最近やたら活気がある。
老若男女を問わず、『主様』を讃えているのだ。
元は無数の傭兵のたまり場だったこの国で崇められる『主様』という存在を、一度は見てみたいものだ。
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「積み込みは完全に終わったか?」
「「「はいっ!」」」
「よし、じゃあ次の目的地に出発だ!」
「ねえねえ、おじさん!」
「うん?俺のことか?」
「どうしたんだい、お嬢ちゃん?」
「綺麗な水色…まだ知られてない部族かな?」
「『中央』から持ってきてる果物って、ある?1つ売ってほしいんだ」
「…グレフ18G、マーン23G、オンジ24G」
「じゃあグレフ1つ。…でも、確か今の中央での市場価格は15Gだよね?」
「ここは『東部』、今ここでは18Gだ」
「むぅ、16G!」
「いんや、18G」
「うぅ~、17Gは!?」
「18G。さほどの差ではあるまい?」
「ん~、なら『主様』の情報を教えるから、17Gにまけて!」
「…どんな情報だ」
「ふっふっふ~、それは17Gにしてくれた時のお楽しみだよ」
「ならいい」
「あ、いや、ごめんなさい、聞いて!よくない情報だと思ったら18Gでいいから!」
「…お前さん、それだと俺は18Gにするぞ?」
「でも聞かないんじゃまけさせられないし、東部に来たんなら聞いておく方がいいよ」
「ん、まあそうだな。わからないことを誤魔化さんと周りが危ないからな」
「でしょ?じゃあ、まずは主様と呼ばれる所以から」
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町の宿屋の食堂で、水色の少女は商人たちに『主様』の話をします。
他の人々は水色の少女を見て、首をかしげたり目を瞬かせていましたとさ。