62.お見送り
「…では皆さん、何から何までありがとうございました。また機会があれば訪れたいと思います」
「おう、また来いよ!」
「狩りの時以外ならいつでももてなすわよ」
「王女様に直接お会いして、お話をさせていただくだけで光栄ですよ。こちらこそありがとうございました」
「そう言っていただけるならありがたいですね」
「フィルお姉ちゃん、またね!」
「またなー!」
「ええ、また木の下でお話しましょう、アワユ、マタク」
「元気でね。…これ、少ないけど私秘蔵の調合薬だから」
「まあ…ありがとうございます。ですが、秘蔵なのによろしいのですか?」
「大丈夫!調合方法も私秘伝だし、材料もそうそう入る物じゃないからね」
「では、ありがたくいただきますね、ヴェステさん」
「村人一同、またの機会を楽しみにしております…なんてな!また来てくれ!」
「はい、是非とも。…では皆様、またお会いしましょう」
「またな~!」
「…見事な転移魔法ね。どう、シャムズさん?」
「…追跡不可…陣解析不可…間違いなく天才の領域…」
「すげえもんだなぁ…」
「綺麗なお姉ちゃんだったね!」
「さて、明日も仕事はあるんだ!さっさと帰った帰った!」
「「「「「「は~い」」」」」」
■ □ ■ □ ■ □
公国の首都の近く、森にひっそりと建っている小屋に、1人の少女がやってきた。
白いドレスに控えめながらも美しい、小さな宝石が埋め込まれたペンダントを身につけている。
注意深く周囲を見回してから素早く小屋に入った少女は、小さく息をつくと奥に進んでいく。
「…帰っていらっしゃいましたか」
「あ、おかえりー♪」
「全く、困りましたよ。いきなり連絡が途切れるから何かと思いました」
「ごめんごめん。でもこっちも色々都合があって…」
「…まあ、私ばかりわがままを言っていてはいけませんしね」
ふと少女が窓に視線を移すと、空は大分夜の色に染まっていた。
結局、少女はその小屋で一晩過ごしてしまうのだった。