51.2人のお仕事 その9~兵士談·案内人が怖かった
「さて、これから森に入る。分かっていると思うがこの辺りの獣は異常だ。決して気を抜くな!」
『はっ!』
「うむ、では方角を確認して…」
「その必要はありません」
「だ、誰だ!」
「姿が見えない…どこに!?」
「うろたえるな。…どなたですかな?我々は公国から派遣された調査隊だが…」
「…私はフィエンゴの村の者です。目的と公国から派遣されたという証をお願いします」
「目的は、目撃された『闇竜らしき竜』の調査だ。証はこの紋章でいかがか?」
「…目的は了解しました。…確かに、その紋章は正規の兵にしか渡されない物…判別用の魔力が有り、偽造された気配は無いですね。…分かりました、どうぞお入り下さい。私が村へ案内いたします」
「助かる。…君か?」
「え…お、女の子…!?」
「なんだ、どんな奴かと思ったらこんな…」
ヒュパッ、バシュッ!
「クァァ…!」
「な、コイツは…!?」
「サ、サイレントクロウ!」
「…油断は即、死に繋がります。私について来て下さい」
「分かった。頼む」
「将軍、頭をお下げになる必要は…!」
「あるよ。土地のことはそこに住む者に従うべきなのだ。…特にこういった所はな」
「は、はい…」
「…よろしいですか?」
「すまない。みんな、出発だ!」
『はっ!』
「…竜のことについては村長からお聞き下さい。では…ちゃんとついて来て下さいね」
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森の中を沢山の影が駆け抜けてゆきます。
弓を背負った女の子が、木を飛び交いながら兵士を先導していましたとさ。