50.2人のお仕事 その8~『喰らう』狩人
大分遅くなってしまいました…。
戦闘描写は拙いとは思いますが、読んで下さったら嬉しいです。
では、狩りの終幕をどうぞ。
駆け出したライニィは、大きく振るわれた尻尾を倒れる寸前まで姿勢を低くしてかわし、なおも走りつづける。
竜は尻尾をかわされたことに気にした様子も無く、紅い翼を羽ばたかせて舞い上がった。
「逃がさない!雷炎舞、其の二!」
その行動に対して、ライニィはその場で二振りの剣を、時に同時に、時に交互に絶え間なく振るい、魔力の刃を発生させた。
刀身から紅と金の刃を放ちながら舞うその姿は、どこか現実味が無く、幻想的な印象を持たせる。
竜はまたもや翼から紅い風を放ち、魔力の刃に正面から対抗した。
打ち消しあう風と刃は、辺りに熱風を撒き散らす。
先ほどは不意打ちで対処が出来なかったものの、今はライニィ1人で風に拮抗している。
「大分魔力を奮発してんな…なら、俺も負けてらんねえ!」
ライニィを挟んで竜に対峙するハルバは、相棒が戦っている間に、ありったけの魔力を武器に送り続ける。
目の前に構えた『氷柱』が、水色の輝きをどんどんと強めていく。
漏れ出た冷気が、ハルバの両足を中心に地面を凍らせた。
やがて、『氷柱』が光に包まれて見えなくなる。
「……よし!いいぜ、ライニィ!」
「了解!…ふっ!」
返事の後、ライニィは鋭い息をして走り出した。
その体は細身の見た目とは思えない速さで動く。
竜が、敵は自分の攻撃で燃え尽きたのだ、と思いこむほどの速さで。
「…雷炎舞、其の一!」
「グガァァッ!?」
一瞬で近くにあった木を『駆け上がって』飛び上がったライニィは、竜の翼膜を狙って空中で舞った。
放たれる斬撃は狙い過たず右の翼を切り裂き、空中にいられなくなった竜は無事な左の翼で着地をしようとする。
しかし、狩人がそれをやすやすとさせはしなかった。
「…まだぁっ!」
「グガッ、ガァァァッ!」
竜の背から紅と金が走り、容赦なくその体を攻める。
ライニィは切りつけた翼を掴んで、腕力のみで自身を持ち上げて、背中に移動していたのだ。
竜はたまらず急降下し始めた。
「ハルバ、『二字』を!」
「おうよっ!」
ライニィの言葉に、ハルバは意識を落ちている竜に向けてから跳び上がった。
先ほどのライニィの跳躍には程遠い高さではあるが、それでも竜の上にまで到達する。
ハルバが背に『氷柱』を持っていくのを見て、ライニィは竜から木に跳び移った。
「いくぜ!凍·結…極寒!!」
横凪ぎに振るわれた『氷柱』から、水色の光となって見えるすさまじい冷気が放たれる。
「ガァァッ…!」
竜は、その光に込められている異常なまでの魔力量に、すぐさま回避行動をとろうとするが、右翼が裂かれているために体を僅かにずらすことしか出来ない。
逃げられない竜を包み込んだ光は、竜に触れた瞬間に竜の周りの水分を全て凍らせ、連鎖的に周りの空間にも氷を発生させた。
その規模は『氷山』とは比べものにならない。
氷の塊となった竜は、轟音と共に大地に激突した。
「ハルバ、急いで!すぐに溶かし始めるはずよ!!」
「ああ!…いただくぜ、お前の…魔力全てっ!!」
言葉が終わる時には、ハルバの視界の中になんとか氷を溶かして脱出しようとしている竜の頭が映っていた。
いつになく鋭いハルバの目が、更に鋭くなる。
「終わりだ…『捕食』!!」
その一言が発された瞬間、竜を包んでいた火が霧散し、同時にその体色が一気に白を通り越して透明になった。
立ち上がり始めていた竜は、力無くゆっくりとその場に前のめりに倒れ伏す。
そして、魔力全てを『喰われた』竜は、すっかり戦意だけでなく生気までも失ったような眼で、自身に振り下ろされる刃を最後に見た。