46.2人のお仕事 その4~その時姫君は知った
「…………」
「…姫様?」
「…お父様の所へゆきます」
「何故か、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「…発見されていたのは、黒竜などという生易しい物ではありません」
「!?」
「事は一刻を争います。カイン、急ぎ取り次ぎをお願いします」
「はっ!!」
「…急がなくては…『闇』が放たれる前に…ハルバ、どうか無事でいて下さい…」
姫は穏やかな雰囲気を一変し、その美しい容姿から焦りをにじませながら、王の間へ向かった。
■ □ ■ □ ■ □
「…はぁ…はぁ…」
「…とりあえず逃げ切った、わね…」
「すまん、あんなことになるとは…」
「いいえ、ハルバのせいじゃないわよ…アイツがおかしいだけ。あんな、対人戦みたいな動きをするなんてね…」
「で、どうする…?アシッドブレスじゃなかったからなんとか氷の盾で耐えきったけど…」
「あの攻撃、黒い光…まさかとは思ったけど、『闇竜(あんりゅう)』ね、アイツ…」
「魔竜族か…なら霜柱もそろそろ抜け出してるかな…」
「どっちにしろもう1回やってもらうけどね。…私も、『使い時』かしら…」
しばらく沈黙した後、狩人たちは再び歩き出した。
その跡には、小さな赤い斑点だけが点々と地面に残されていた。