27.新しい住人
「…う…?」
「あ、起きたぜ、アダガフさん!」
「おう、ありがとなマタク。…大丈夫か、お前さん?」
「…ここ、は?」
「公国領の北端の村だ」
「…フィエンゴ?」
「確かそう呼ばれてるな。それで、お前さんはフロストベアに背負われてきたんだが、覚えてるか?」
「…あ」
「まあ今は子育ても落ち着いた時期だから、人にも下手に警戒しなければ害はない。運んでもらえたのは…多分、お前さんが気に入られたからだな」
「…僕が?」
「ああ。…そうだ、しばらくこの村に住まないか?家は俺んとこに泊まればいい」
「…でも」
「気にしなくていい。それにこの辺りはこの村以外は初めての人間は生きていけないぞ?なあに、森の住人に認められたんだ、次に会った時は彼らも村の一員として見てくれる」
「…ありがとう、ございます」
「うむ。さて、まだ名乗ってなかったな。俺は村長のアダガフ。お前さんは?」
「…僕は、シャムズです。…水の魔法が使える、魔術師です…一応」
「おお、魔術師の旅人か!こりゃおもしれえ!よろしくな、シャムズ!」
「…はいっ」
■ □ ■ □ ■ □
かくして、村に新しい住人が増えました。
ハルバやマタクが村長の家を覗き見しているのを、ライニィは呆れた様子で、アワユは不思議そうな面持ちで見ていました。
そして御神木のてっぺんから、アレクスが何やら難しそうな表情で、村長の家を眺めていましたとさ。