24.とあるお姫様の朝
公国領の中心にある、王都ディバイセクル。
その王都の南にそびえるディバイン城の最上階の一室で、公国の姫君が朝のまだ冷たい空気に身震いし、天蓋付きのベッドからゆっくりと起き上がろうとしていた。
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「ふ…んん…。…朝、ですか」
『…さ………め…ま…!』
「? 何か騒がしいですね?」
『…めさま…「姫様!!」
「まあまあ、どうしたのですカイン。何をそんなに…」
「説明は後です!早急に城から避難をするように仰せつかって参りました!」
「あら…分かりました。では転移の準備をします。大広間に皆を集めて下さい」
「はっ!!」
「…さて、媒体は何処だったかしら。…あら?」
『…ぉぉぉおおお!!?』
「まあ、なんと…フォローウィンド」
「おおおぉぉぉ……お?浮いてる?もしかして君が助けてくれたの?」
「はい。まさか空から人が降ってくるとは思いませんでしたが…」
「せっかく成功だと思ったのになぁ~。やっぱ自由に飛ぶのは難しい!」
「? 飛ぶ?」
「おう、それが俺の目標?いや、夢みたいなモンなんだ!」
「まあ、それは素敵ですわね」
「そうか?他のヤツにしてみれば何てことないかもしれないだろ?」
「そうかもしれませんが…何かに憧れること、そしてそれが遥かなる大空であること…素晴らしいと思います」
「…ありがとな。んじゃ、俺は村に戻るから、下ろしてくんねえか?」
「はい。…ところで、お名前を聞いてもよろしいですか?」
「勿論。俺はハルバ!公国の北端にある村の狩人だ!」
「ハルバ…私はここに住んでいる、フィルアイナと申します。フィルとお呼びください…ハルバ様」
「様はやめてくれよ。見た感じ…同じ15、だろ?だったらハルバでいいさ、フィル。」
「…ふふ、分かりました。…ハルバ」
「うんうん。そうだ、今度俺の村に遊びに来いよ。4ヶ月に一度公国の商人隊が来るから、それについてきゃ来れるはずだ」
「…はい」
『姫様~!もう大丈夫だそうですよ~!』
「ん?何だ?」
「お気になさらないで大丈夫ですよ。…また会いましょう、ハルバ」
「おうっ、じゃあな、フィル!!」
「…面白い方でした。是非行ってみたいですね、北端の村…フィエンゴには」
「姫様!お騒がせ致しました!」
「いえ、構いません。…ところで、避難の理由は砲弾ですか?」
「はっ、それらしき影を望遠鏡で捉えたので…」
「…なるほど。それで、それはどうなったのです?」
「着弾の音が無いことから、王都を越えていったものと思われます」
「そうですか。…人間大砲、ですか。ハルバ」
「…姫様?」
「いえ、少し気になったので…」
「少数ではありますが捜索隊を急遽編成しましたので、後ほど報告いたします」
「分かりました。お待ちしてます」
「はっ、では、私はこれで…」
「…ハルバ、早く会いたいですね」