20.袋が欲する『モノ』
「ヴェステさん、どこまで行っちゃったんだろう…。ここ、もう禁止されてる区域だよ…」
「だ、誰か、ハルバく~ん!!」
「ヴェステさん!?…あっちか!!」
■ □ ■ □ ■ □
「どこまで行ったんだよ?」
「オアゼ山のすそ野まで。しかもその時日が暮れちゃっててさ」
「明かりは?」
「紅蛍(べにほたる)もちょうど繁殖期だったから、なんとかなった」
「あれはキレイだったわね」
「なんともまあ危なっかしい…。っと、続きをお願いします」
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「ヴェステさんっ!うわっ!?」
「ハ、ハルバくん!どどどどうしよう~!!」
「ウィンド·ビーか!しかも、これまたちょうど繁殖期…この季節はやっぱり危ないなあ…」
「なんでそんなノホホンと出来るのっ!?私、囲まれてるんだけどっ!!」
「囲んでる内は大丈夫です。ただ、それ以上騒ぐと敵として認識されかねないですから、僕がなんとかするまで少し待っててくださ…」
「そんな悠長なことを…!ああもう!くらえ、腐臭玉っ!!」
「っ!ヴェステさん!ウィンド·ビーには…!!」
ブゥゥゥゥン…ビュビュビュビュッ!!
「え?きゃぁぁぁぁっ!!」
「くそっ!!…ごめんっ!!」
ブワッ!…ボトボトボト…
「ハ、ハルバくん…。それ…」
「…ウィンド·ビーは目の他に匂いで判断をします。自分たちとは違う匂いに気付くと羽から小さい風の刃を出します」
「………………」
「そして…その後相手の位置を確かめるために風を引き戻して…匂いを嗅ぐために空気を吸い込むんです…。群だけにその量は…半端ではありません…」
「じゃあ…それは…」
「毒粉の入った袋…ひとたまりもないですね…」
「…ごめんなさい!私が勝手に奥に行ったから…」
「いいですよ。ヴェステさんが奥で得られた物を大切に使ってくれれば、それで…」
「…ごめん、なさい…」
「…帰りましょう。もう遅くなりましたから、とばしますね。じゃ、失礼します」
「え?きゃっ、ハ、ハルバくん!?ちょっと、これ、おおおおひ…っ!!」
「しっかりつかまってて下さいね。…はっ!」
「きゃぁぁぁぁ…」
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「…天然炸裂、だな。原因はそこか」
「? 原因って?」
「も~、私がハルバくんが大好きな理由じゃない~!」
「え、ヴェステさん、いつから?」
「ん~、紅蛍のあたりよ?でもホントいい思い出だわ~…」
「…ダメだ、ヴェステさんが…なんか遠いトコに…」
「ま、用事はしばらく経ってからだな」
「はあ~、投石機、何時になったら…」