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2.明くる朝は血の色地獄
「で、大丈夫?」
「なワケ…ねえだろ…」
「まあそうでしょうね。周囲2歩分ぐらいは真っ赤っかですもの」
「だったらなんで…一晩放置…?」
「帰ってこなかったのはハルバよ?ご飯も用意してたのに」
「いや…それはそうとしても…せめて夜中に…見にくるぐらい…」
「1年ぐらい前だったかしら、私の忠告も聞かずに御神木に登って、葉っぱは破るわ小枝は折るわで挙げ句の果てにてっぺんから落ちて、唯一の同居人の私に丸1日看護させた馬鹿がいたわよね?」
「うぐぅ…イヤミな奴め…あ~…にしても…血流しすぎか…?」
「遊んでばかりだから鈍ってるだけよ。帰ったらまたキリキリ働きなさい」
「………………………。」
「…ハルバ?…全く、世話がやけるわね」
■ □ ■ □ ■ □
村から30分のところにあるアキフの丘から、少年を背負った少女が村に向かってつむじ風を起こして走っていました。
まだ成長しきっていないほっそりした足ですが、大股で走る姿は跳ねるように軽快です。
森の中のある木の上に立つと、少女は背中にいる少年に顔を向けました。
静かに寝息をたてている少年を見て、少女は微笑むのでした。