107.はつしごと
「…ということだ、いいか?」
「は、はいっ、頑張ります!」
「まあ龍とはいえ北方の、ここらの獣と大差はない。というかここの奴らの方が強い。油断しなければお前は十中八九達成できる」
「はいっ」
「で、だ…ニャムル、あれの許可は?」
「もう大丈夫でしょう。はい、これが君の狩猟武具…闘弓『疾風』です」
「『疾風』…」
「握りの部分以外は風に特化調整した魔鉱石ですから、君が得意な風の魔法の出力補助をしてくれます。あと、近接用に2本の短剣をつなぎ合わせた構造にしましたよ」
「ははあ、確かにこりゃ狩弓じゃなくて『闘』弓だな」
「…………」
「以前からこれの試作品を使っていた君なら使いこなせるはずだよ」
「…ありがとうございます」
「…よし、じゃあ後は同伴者だな。えーと、資料は…」
「…同伴者?北の龍ごときに…」
「ん?どうした?」
「…なんでもないです、アダガフさん」
「そうか、ちっと待っててくれ、アワユ。ニャムル、そっちの机に人相が載った書類無いか~?」
「何してんですか…すみませんね、僕も手伝ってきます」
「…はい」
□ ■ □ ■ □ ■
少女は手にした弓の翡翠の刃を見つめ、じっと黙っています。
その様子に完成版ゆえの反応かな、と思いながら、鍛冶師は書類を探し始めましたとさ。