103.風と共に来たる
「…今日は、風が涼しいな…。それにしても…これじゃ、式が足りない…かな…」
「何してるの?」
「魔術式の…再構築。改良する、余地は…いくらでもあるから…」
「ふぅん。今は…水の魔術の改良だよね?」
「うん…。やっぱり、水に触れながらが…一番構築しやすい…」
「なるほどね。…ねぇ、風、ってどう思う?」
「風…。少し学んだことが、ある…。雨が降るのは、風が運んでくれるから…って…」
「うんうん、そうだね」
「…だから、水を扱う僕にとっては…水の運び手…。水の次ぐらいに…深く触れたい、もの」
「…えへへ、そっかぁ…ふふふっ♪」
「どう、したの?」
「あ、まだ振り向かなくてもいいよ。構築中は集中力が要るでしょ?」
「うん…ありがとう。…それで、どうしたの…?」
「うんとね~、う~ん、どうしよっかなぁ♪」
「…?」
「…うん、決めた!また来るから、その時には名前で呼んでね、シャムズくん!」
「え…?」
「そしたら、あなたに祝福をあげるね!」
「祝福…それって、まさか…?」
「じゃあ、今日は帰るね。私はルファイム。忘れちゃダメだからね!」
「あ…。っ…突風…。いっちゃった……ルファイム、か…」
■ □ ■ □ ■ □
河原で空を見上げる魔術師は、しばらくそのまま立ち続けます。
その時、緑色の光はなんだかとても焦ったように飛んでいましたとさ。