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100.ご挨拶
「ん~っ、いい朝だ!」
ハルバは背を伸ばし、腰を左右に曲げて体をほぐす。
まだ村は静けさに包まれており、ほとんど音はしなかった。
…ふと、そんな中。
…サク、サク。
「ん?シャムズさん?」
「…おはよう、ハルバくん」
やってきたのは相棒ではなく、居候の青年。
見ると、その格好はいつもの魔法使いの服ではなく、フィエンゴの住人の着るリザードラットの毛が編み込まれた服だった。
ハルバは首を傾げる。
「早いね、シャムズさん」
…服のことに、ではないが。
そんなハルバを見て、シャムズは微笑んだ。
「うん…挨拶、したかった…から」
「あいさつ?」
シャムズは深く礼をしてから、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「これから…フィエンゴに住むことになった…シャムズです。…よろしく、ハルバくん…」
キョトン、としていたハルバだが、すぐにニカッと歯を見せて笑う。
「ん、よろしく!シャムズさん!」
2人は握手を交わして、笑い合う。
その様子を、木に背を預けたライニィが遠目で見ていた。
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この日、魔術師の青年は1人1人に挨拶して回りました。
その表情は、前のいつよりも柔らかでしたとさ。