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98.その雨の夜は長く 8
「…さて、アレは失敗したか?」
「はい、そのようです。彼の失敗は、つまり、誰も出来ない依頼となります」
「ああ、それは大変だ。じゃあ諦めるしかないか」
「遺憾ですが。ええ、大変遺憾ですが…」
「ああ…。だが仕方がない、最高ランクで出来なければ他にも出来ん」
「はい…」
「………………」
「………よろしいですよ、処理しました」
「ご苦労、いや、いつもすまない」
「いえ、これが今回の私の役目ですから。…それにしても、惜しかったです」
「だが元々彼は出るべき場所だ。あの手紙もすぐに着くだろう」
「承知しております。では、また夜に」
「ああ、待っているよ…我が妻よ」
「…あなた、仕事中はよして下さい。…では」
「……お前が幼い頃からの付き合いだったな。だがな、分かっていただろう?」
コンコンッ
「レイナルド伯爵、そろそろお時間です」
「分かった、今行く」
「失礼します…」
「…誰かを犠牲にする者に、国を護る資格は無い。それが私の流儀だとな。それはお前も例外ではないぞ」