第二話
澄み渡る青空がとても綺麗な、とある日の午前八時ごろ。
通学中の生徒で賑わう校舎前の前庭にて、本日も一際多くの視線を集める一人の生徒が居た。
彼女の名前は柊寧々。この学園のマドンナだ。
「おい見ろよ!柊さんだぜ!」
「本当だ!今日も凄く可愛いな!」
「ねぇ見て!柊さんよ!」
「本当だ!朝から拝めるなんて凄くラッキーね!」
彼女の姿を視界に収めると同時に、歓喜に沸く周囲の生徒達。
客観的に見れば生徒達の反応は、とても過剰に思えるかもしれない。
だが彼女の美貌を待ってすれば、これらの反応も当然の結果なのだった。
なにせ彼女の容姿は、頭の先から足の先まで、その全てが完璧に完成された奇跡の様な美貌。
そんな千年に一人の美少女と呼んでも過言がないレベルの美貌を前にすれば、誰だって見惚れてしまうのが自然の節理だろう。
つまりは周囲の反応も、当然の結果という訳なのだ。
「にしても本当に可愛いよな!」
「だな!それになんか俺!今日は頑張れそうな気がしてきたぜ!」
「おう!実は俺も!」
「私も!柊さんには本当に感謝だわ!」
「だな!マジで感謝だぜ!」
そんなマドンナの圧倒的な美貌を前に、終いには嬉々としてお礼を述べ始める周囲の生徒達。
その盛り上がりは完全に絶頂といった様子だった。
、、、が、しかし。
そんな周囲の反応とは打って変わって。
、、、はぁ。
誰にも気付かれない様に憂鬱そうな表情を浮かべて、溜め息を吐いた柊寧々。
何故、彼女が溜め息を吐くのか。
その理由は一つだった。
「なんか俺。今日も皆んなからメッチャ避けられてるんですけど、、、」
、、、。
、、、。
皆さん初めまして。
この物語の主人公:柊寧々と言います。
不束者ですが、これからお付き合いの程、よろしくお願いします。
早速ですが、皆さんに一つ聞きたい事があります。
学校って、どうやって馴染めば良いんでしたっけ?
、、、はい。
いきなり話を振られてもビックリしますよね。
なのでまずは現在の俺の状況から説明します。
現在の俺の状況。
数多くの通学中の生徒にコソコソと見られながら、人並みを掻き分ける形で校門へと続く道を進む俺。
、、、うん。
何でこんなに皆んなから避けられてるの俺!?
普通に滅茶苦茶ショックなんですけど!?
理由は全く分からない。
だが現に周囲の様子を確認する為、目線をキョロキョロと振ってみると、目が合いそうになった瞬間、揃って気まずそうに目を逸らす他の生徒達。
そんな周囲の反応から考えても、避けられているのは間違いないだろう。
でも何でだよ!?
俺、何か悪い事したっけ!?
いや何もしてないよね!?
振り返ってみるが、やはり心当たりは全くない。
いや!だよね!
そうだよね!
だからマジで何でだよ!
理由が全く理解できないんだって!
二度目の高校生活。
前世では入学した直後に亡くなってしまった為、今度こそは青春とやらを謳歌しようと思っていたのに!
これでは青春を謳歌どころか、普通の生活すらも危ういんですけど!?
併せてもう一つ補足しておくと、入学から早くも一ヶ月程が経過している現在。
それなりの日数が経過した事もあり、クラス内でのグループは殆ど完成してしまっている訳で。
そんな中、クラス内で孤立しているのは、もちろん俺一人のみ。
駄目だ!完全に詰んでいる!
もうどうしようもないだろコレ!
改善しようにも原因が分からない。
原因を確認しようとしても、話せる相手が居ない。
どう考えても状況は絶望的だ。
この状況から盛り返すのは、自分のコミュニケーション能力から考えても、ほぼ不可能だろう。
終わった、、、。
完全に終わったぞ、俺の楽しい高校生活、、、。
さようなら俺の青春の一ページ、、、。
そしてこんにちは俺の孤独な学校生活、、、。
、、、と。
自分の置かれた状況に絶望しながらも、表ヅラは何とか取り繕いながら、校舎へと続く道をゆっくりと歩いていると。
「柊さん!」
唐突に背後から聞き馴染みのある声で呼び掛けられたのだった。
、、、はっ!
この声はもしかして!
とある期待を胸に振り返ってみると、そこには、、、。
「柊さん!おはよう!」
肩の辺りで切り揃えられた黒髪と少し高めの身長が特徴的な、俺の期待した通りの人物。
クラスメイトの桜木花音ちゃんが居たのだった。
お〜!!花音ちゃん!!
「おはようございます」
彼女を視界に捉えた瞬間、先程までの憂鬱は何処へ、笑顔で挨拶を返す俺。
驚く程の変わり身の速さだが、それも当然の反応だと皆んなには主張したい。
なにせ彼女は、この学園で完全に孤立している俺に話し掛けてくれる、数少ない人物なのだ。
周囲から孤立していると劣等感を抱いている中、そんな人物と出会えば、誰だって笑顔になるだろ。
だから俺の反応は当然の事なの!皆んな分かったか!
、、、付け加えて、自分の保身の為にもう一つ補足しておくと。
俺の口から発する言葉が丁寧語なのは自分の意思ではなく、今世の母ちゃんの教育の賜物である。
だから口調についてはあまり気にするんじゃねえぞ!
良いか!分かったか!
「うんおはよう!今日は良い天気だね!」
「はいそうですね。それに凄く気持ち良いです」
「ねっ!本当にそうだよねっ!それに少しずつ暖かくなってきたし!絶好のお散歩日和って感じだよね!」
「はい。ぜひお散歩に行きたいです」
「そうだよね!」
そんな感じで、当たり障りのない会話を続ける俺達。
先程までの孤立していた俺からしてみれば、凄く楽しい時間だった。
本当に楽しいぜ!
マジで花音ちゃんには感謝だな!
彼女との運転の出会いは、つい先日の放課後の事。
偶然学校に残っていた俺が教室で倒れている花瓶に気付き、折角だからと片付けていると、同じく偶然学校に残っていた彼女が見兼ねたのか話し掛けて来てくれて、事情を説明したらなんと、一緒に片付けを手伝ってくれたのだ。
いや〜!話し掛けてくれるだけでなく手伝ってくれるなんて!
本当になんてお優しい人なのだろうか!
しかもそれ以来、こうして皆んなから避けられている俺に、何かと話し掛けてくれるんだぜ!
マジで天使の様なお方だよな!
冒頭では、皆んなから避けられて憂鬱などと宣ったが、別に彼女が仲良くしてくれるなら、なんかそれだけでも良い気がしてきたぞ!
だって凄く可愛いし!性格もオモクソ優しいし!
こんな天使と仲良く出来る方が、よっぽどレアケースだろ!
それに大前提!一緒に居て凄く楽しいからな!
だから花音ちゃん!マジで出会ってくれてありがとう!
話し掛けてくれてマジでありがとう!
そしてこれからも何卒よろしくね!
マジでよろしくね!
、、、。
「そうだ!折角だし今日良かったら一緒に中庭でお弁当を食べて、その後に少しお花を見ながらお散歩をしない?」
「えっ?」
、、、えっ!?
マジで!?
「ご一緒しても良いのですか?」
会話するだけでなく、一緒にキャッキャウフフしながらご飯を食べても良いの!?
普段からぼっち飯が多い俺からしてみれば、願ったり叶ったりな提案なんですけど!?
「もちろん!柊さんさえ良ければ一緒にどうかな?」
「是非、桜木さんにご一緒させて欲しいです」
「おっけー!なら決まりだね!凄く楽しみだよ!」
「はい。私もです」
やったー!
今日の昼飯は一人じゃないぜ!それも美少女と一緒だぜ!
マジでラッキー!たまには良い事があるもんだな!
ルンッ〜!ルルンッ〜!
、、、てな感じで。
こうして俺達は楽しく会話を続けながら、教室へと続く道を進み続けるのだった。
しばらくは亀さん更新になると思います。
何卒ご容赦を!