第七話 看護
戦闘から二週間、やっとアキの目が覚めた、ソラは大喜びオサムもホッ気分だった。
「ん…あ、あれここは?」
戦闘終了より二週間後、アキが目を覚ました、目線の下にはソラが寝ていた。目にクマが出来てぐったりしており、あまり寝れていない様に見えた。申し訳ないと思いつつも、ソラの肩を揺らした。
「ソラ、ソラ、ここどこ?」
「…ん?アキくん!?オサム!!アキくんが!!」
ソラは飛び跳ねてオサムを呼びに行った、アキは包帯があちこちに巻かれていて、自分は病室にいるのだと判断した。
「おう、二週間ぶりだな、ソラ、悪いが艦長とカリヤさんを呼んできてくれないか?」
「分かった!」
ソラは嬉しそうに艦橋へ向かった、オサムはそれを見てホッとした。ソラはアキが目覚めるまでずっと同じ位置でほとんど動かなかった。
「ソラ、お前が目を覚ますまでの間ずっとお前のベッドの隣で寝てたんだぞ、あとでお礼しておけよ、あとこれもソラが作った飯だからしっかり食っとけ」
アキはキョトンとしていた。
「──なんでそんなに優しくしてくれるんだ?」
「はぁ?!お前…女心って少しもワカンねぇのか?ソラはお前の事好きなんだよ、ちょっとは理解してやれバカ!」
「へぇっ…」
アキは顔を真っ赤にして布団にうずくまった。
しばらくするとアーセナル艦長とカリヤ医師が部屋に入ってきた、相変わらずソラはニコニコしていた。
アキはソラの事をつい意識してしまい、また少し赤くなった。
「アキくん具合でも悪いの?」
「い…いや…」
「ま…まぁそう言うのは我々のいない時にしてくれ、とりあえず君が、第125戦闘飛行隊のアキくんだね?私は空母アーセナル艦長ホンダだ、よろしく、私の隣にいるのは医者のカリヤ大尉だ、ちなみに私達はユーマ隊長とは同期なんだ、──まぁ病み上がりに言うのもなんだが…ソラくんオサムくんにも聞いてほしい」
あまり聞きたくない、彼等はすでに答えは分かっていた。
「はい…」
「前回の戦闘で国連防衛軍と反国連軍が戦争状態に入った、現在は常に戦闘体制になっている、それとユーマ隊長は…戦死した、君達を援護するために9機も撃墜して…」
アキはグッと拳を握り締めた、怪我が治っておらず物凄い激痛が走った、だが悔しくて仕方がなかった。
「実はあいつは新人を担当したのは二回目なんだ、7年前の戦闘で新人の部下を15人死なせてしまってな、それで一度はパイロットの道から離れたんだ、だけど君達のことを伝えると「自分にやらせろ!」ってさ」
「あれはびっくりしたな」
「次の日は嵐にでもなるかと思ったもんな、よく言ってたよ「あいつらの目は透き通ってる、もう雲一つない快晴さ、操作技術もお前ら海軍より上じゃねぇのか?」って会うたびに君らの自慢さ」
「今回の戦闘で我々は隊長を失いました、しかも敵機も一機も墜とせていません、勇気も操作技術なんかもありませんよ!」
アキはつい大声を出してしまった、オサムたちは俯いてしまった。
「──撃墜か…それだけが大事か?つまり人殺しのために戦うと言うことか?それとも何か?名誉か?失う?なに甘えたこと言ってんだ、今は非常事態、みんな護りたいものの為に戦ってる、隊長、いやユーマは自分を犠牲にしてお前達を守ったんだ!お前にはそれがないのか?えぇ!!どうなんだ!」
艦長はアキの胸ぐらを掴んだ、カリヤ大尉は艦長の腕を掴み振り払おうとした。
「ホンダよせ、怪我人だぞ」
胸ぐらを掴んでいる腕を掴み返し、グッと握りしめた──。
「….っ!自分は!青い空を見たい!血が一滴も流れない綺麗な青空が見たい!!そこには一本のキレイな放物線を描いたひこうき雲が堂々と空を切り裂いていく…!その飛行機には爆弾やミサイルが載ってるんじゃない!人々を乗せて、夢を運んでるんだ!俺はそんな空が大好きだ!俺はそんな空を守る為に戦う!」
数秒間、無の時間が続いた。
「…ユーマの言う通りだ、まぁいい、胸ぐら掴んで悪かった、この艦は三日後、ベース113トクマツ基地に入港する、君達にはそこで追加に一週間休暇を与える、そこでしっかり休息を取るように」
艦長の目に迷いは感じられなかった、「この人は信用できる」三人はそう感じた。
「ひとまずFG15関してだがアキくんのはもう完全に使い物にならない、そして相手は人型、そこで我々国連側も極秘に開発していた空陸両用人型兵器、通称アーマーフレーム、AF-01のテストを行う、君たち三人はこのAF-01のパイロットになって欲しい」
「赤い死神のエンブレムを見ました、上から降ってきて俺の機体めがけて発砲してきたんです、あんな動きをされれば従来の戦闘機だけでは太刀打ち出来ません、やらせてください、AF-01のパイロットを」
ソラとオサムは今の発言を聞いて、アキの気持ちが強くなっている様な気がした。
ホンダ艦長は、口角を上げ三人の目を自身の目に焼き付けた。
「助かる、とりあえずいまは安静にしててくれ、前回の戦闘のデータもまだ集まっていなくてな、またちょくちょく聞きにくる、動けるようになったら甲板で運動でもしておくといい、この艦は400mを超えてるからな、運動には持ってこいさ」
そう言ってホンダ艦長とカリヤ大尉は部屋を立ち去った。
「ソラ、ありがとう看病してくれてたみたいだね」
「へっ!?いや…わ…私は…えへへ」
「また始まった…俺は先に休んでるぜ」
オサムは呆れた顔で部屋を出て行ったが、なんだか嬉しそうだ。二人になった時、ソラがアキの手を取り頬に当てた。
「良かった、本当に良かった」
ソラはまた目の前が水浸しになった、この数日の緊張が一気にほぐれ、ソラの顔は安心感で一杯だった。アキはソラの作った食事を手に取り、頬張った。
気づいたら恋愛小説みたいになってる