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ひこうき雲  作者: 三毛
第七章 nostalgic
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第五十九話 最低な思い出

第303技術戦闘隊は対空網を突破しなんとか基地の敷地へ侵入した、この段階でのアーマーフレームの損失は20%を超えている。


「なんとか……張り付いた、オサムとソラは?!」


「2人とも無傷よ、運がいいね私たち」


「その運も尽きたみたいだ」


オサムが向いている方向にはブレードウルフが2機、こちらを見つめている。明らかに臨戦体制を取っており、肩部レールガンの砲身はこちらを向いている。


「最悪だ、よりにもよって新型か」


「なんでもいいから止めるぞ、こいつらを止めねえと制圧出来ない」


「ググググ、ガァァァァァァァ!!」


ブレードウルフは金属音の様な鳴き声を叫び、レールガンを連発し、右往左往しながら三人の元に突っ込んできた。


「うおっ、あいつ友軍の事は一切考えていないのか!?」


「そもそも無人機の可能性がある、あの機動は人は耐えられない!」


「こっちに真っ直ぐ来るかぁ!」


ガチィン!と金属同士が激突する音と共に、オサムとソラに突っ込んでいった。なんとかオサムもソラも刀で押さえ込み、鍔迫り合い状態が続いた。アキは滑空砲を構えたが照準が中々合わない事に苛立ち、舌打ちをした。


「チッ、合わない……!」


「アキくんあの熊が!!」


「でも……!」


『アキ!オサムとソラを信じてあの熊を止めろ!』


セトの無線を聴き振り向くとアクトロスはゆっくりと市街地へと向かっている、他のアーマーフレーム部隊は市街地で交戦している為にアクトロスに気が回っていなかった。


『空軍は壊滅、民間人の避難も完了してない、俺たちの支援は絶望的だぞ!今はお前しかいない……!』


「く……うぅ……」


滑空砲を格納し、ゆっくりと刀を引き抜いた。


(やるしか無いのか、だけど1人で倒せるか……)


アキは頭を振り己の恐怖心を塗り替えた。

こうしている間にもアクトロスは市街地へと侵入、民間人に対して発砲を開始した。


「うおぉぉぉぉやるしかないんだぁぁぁ!」


アキはAF-22のリミットラインをオーバーさせ、フルスロットルでアクトロスの方へ突撃した──時だった。

横から真っ黒の機体が全速力で接近しアキはそれと衝突、とてつもない衝撃がアキの機体に走った。そのまま流れる様に地面に叩きつけられ基地の格納庫にぶつかり停止した。

余りにも一瞬の出来事で、理解するのに時間がかかるほどだった。


「いっ……てぇぇ…」


「アキ、後ろ!奴だ!」


「はっ……こんな時にィ!」


サイガのMF-02ERだ、ゆっくりと歩き瓦礫の山から見下ろす様に歩いて来た。


「そう簡単に手順が進むと思うなよ、餓鬼どもが」


「この悪魔が、どれだけの命を消すつもりだ!!」


サイガは鼻で笑い、その会話をたった一言で終わらせた。


──全てだ


人を殺める事に対して一切悪気のない様な無機質なセリフにアキは思わず固まってしまった。


「オルカの方がまだマシだ」


「あいつは所詮腰抜けだ、この戦争の本質がわかっていない」


「何が本質だ!この愉快犯が!あぁっ!」


立ち上がるアキの機体をタックルで押し出し、右アームで弾き飛ばした。

愉快犯と言うセリフを聞いてサイガは腹を抱えて笑った。


「フハハハ!!愉快犯かいいなぁそれ、()()()にぴったりだ」


「なんだと……!」


「もう8年になるのか」


(当時は12歳、今ならもう20歳だ)


◯ 回想


「現在反国連派閥との状況は膠着状態にあり、今後最悪の事態に繋がる可能性が……」


サイガは元々グレージア空軍 第7独立航空戦隊の中隊長を務めていた。グレージア軍は後に反国連軍として活動する、家は今のベース078にあった。

当時の状況は明日戦争が発生するかしないか、そんな逼迫した状態だった。

TVはずっとこんな話ばっかり、サイガの子供のユウタもその状況は分かるらしく、怖がっていた。

サイガの嫁は早くに亡くなってしまい、男手一つでユウタを育てていた、ユウタはそんな父親のことが大好きで仕事にも関心があった。


「戦争起こるのかな、戦争始まったらパパも行くの?戦争行ったら人を傷付けるの?」


「……かも知れないなぁ、でもパパは人を傷付けるなんてしない、ユウタが居るからな」


「ここの戦いの場所になるの?僕死んじゃうの嫌だ」


ユウタは涙目になりながらサイガに訴えかけた。反国連軍として子供にこんな思いをさせてしまった事に父親として情けなく感じた。


「こらこら、縁起の悪いこと言わないパパ悲しいな」


「僕はパパと一緒にいたい」


思わず泣きそうになっていた。サイガは優しく抱きしめて頭を撫でた。


次の日



朝の7:30 ユウタは学校へ行く準備をしていた時だった、数名の足音が聞こえる、革靴の様な足音だった。足音は玄関へと近づき立ち止まった、サイガの名前を呼びながら玄関を叩いている。


「第7独立航空戦隊 中隊長 サイガ大尉いませんか、国連防衛軍 ベース009 サイサリス近衛大隊です」


(憲兵……?なんの様だ)


ユウタは恐怖の余り身震いしており、サイガはクローゼットに隠れる様に指示した。


「憲兵さんがなんの様ですか」


「グレージア空軍 第7独立航空戦隊 サイガ大尉、反国連派閥へ関与した罪で逮捕します」


「まて!どう言うことだ、反国連派閥ってそもそも我が軍はまだ国連防衛軍に加入する前だろうに」


「へっ、それがいけないんだよぉ!!」


ヘラヘラと笑いながらそう言い放つと近衛兵は銃のグリップで思いっきりサイガの頭を殴った、だがサイガは反撃もせずただ黙って近衛兵を見つめていた、頭からは血が流れ出していた。


「なんだその顔は、まぁいい連れて行け、これより家宅捜索を開始する」


「家宅捜索っても何にも出ませんよ」


「やかましい」


クローゼット越しに父親が連れて行かれる様子にユウタは我慢が出来ず飛び出してしまった。


「パパ!」


(ユウタ……!まずい……!)


「ん?なんだこのガキ」


近衛兵はユウタの襟を引っ張り拘束した、暴れた挙句ユウタは近衛兵に噛みついた。


「大人しくしろ!イッテェ!!こいつ噛みつきやがった!」


「撃て」


「待て!ユウタは見逃してくれ!」


「撃てって……」


「口実は出来ている、相手が抵抗を見せたから発砲した。ただそれだけだ、撃て」


躊躇っている仲間に痺れを切らし、近衛兵隊長はなんの躊躇もなくユウタに発砲した。サイガは今にも飛び出そうな感情を徹底的に押し殺し復讐を決意した、今は静かに歯を食いしばった。


◯ 回想終わり


「お前らが……」


歯を目一杯食い縛り、心の底から怒り狂い無線越しにガタガタと歯が当たる音が聞こえる、アキは無線を通してサイガの表情がわかる程でのけぞってしまった。

サイガはその隙に姿勢を低くして腰にしまっている対アーマーフレーム用マチェットを装備、飛びつく様に斬りかかった。


「来るか……うおぉぉぉ!!」


アキも応戦する様に胸部バルカンを発射した、サイガは回避する様子を見せなかったが弾が当たらない。


「当たらない、スコープが壊れてるのか!?……違う、斜めに移動しながら突っ込んできてるのか!」


余りにも絶妙な位置関係にFCSが誤認識し、照準補正が正確に行われなかった。


※FCS Fire Control System 火器管制装置


サイガは地面を蹴り上げアキの機体の上部で反転、着地した時にはアキの背後に取り付き、ショットガンを構えた。

アキは本能的に回避行動に移ったが、サイガは当たるはずの無いショットガンを発砲した、何故ならその先にビル群が立ち並んで居たからだ。ショットガンのペレットはビルを貫通、数棟が倒壊した。


「流石にやりすぎだろ!ふざけるな!」


「黙れ!これは俺の戦争だ!サイガよりHQへ、高速道路を緊急封鎖、市民をフィサリアから1人たりとも逃すな!爆破しても構わん!」


『こちらHQ了解、料金所を緊急封鎖し橋及び幹線道路も爆破します』


「ククク……最後まで絶望を見せてやる」


その異常な狂気に恐怖心と葛藤しながらもアキは再度刀を構え直した。

 

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