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ひこうき雲  作者: 三毛
第七章 nostalgic
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第五十八話 人道

それからは両軍に目立った行動はなく、逆に胸騒ぎがする、静かな時間だった。

早朝5:00 新第一艦隊は新第二艦隊と合流、戦闘準備を開始していた、アキ達もアーマーフレームに搭乗し、輸送機に乗り込んだ。


「我艦隊はこれより、旧国連防衛軍基地サイサリス及びフィサリア奪還作戦を開始する。知っている者も多いと思うがあの街は8年前の衝突で被害が大きかった地区の一つだ。あの時の被害者もこの艦隊に大勢いる、これ以上同じ気持ちになる人を出さない為にも、我々はこの戦いに勝たなければならない──。正義に正解も不正解もない、皆自分なりの正義がある正義とは何か、自分の正義をしっかりと見せつけてほしい。諸君らの奮闘に期待する」


ALL STATION CONDITION 1 総員第一種戦闘配置──


サイレンと共に表示されている残り時間が00:00:00に変わった、作戦開始の合図だ。目の前にはフィサリアと巨大な壁の様な要塞──サイサリス基地が見えている。


「全艦、第一次攻撃開始、巡航ミサイル発射」


真っ白な航跡を引きながら、巡航ミサイルがサイサリスへと向かう。その上からアキ達が乗っている、アーマーフレームを搭載した輸送機群が防空限界高度ギリギリからそれを見下ろす様に飛んでいる。同時刻、ペガサス戦略爆撃隊が作戦区域に侵入した。


「こちらペガサス戦略爆撃隊、これよりサイサリス及びフィサリアを空爆する」


「空軍め、無茶しやがる」


「止めますか」


「いかせてやれどうせ引き返さない、あいつらも被害者だ」


ペガサス戦略爆撃隊がフィサリア上空へ差し掛かった時だった。防空識別圏に入った機体から順に、ハエのように堕とされていった。それを見ながらホンダは不満そうな顔をしていた。


無駄死にだ──。


「まもなく着弾」


「どうせほとんど撃ち落とされる、甲板荷電粒子砲発射用意!甲板作業員は直ちに退避せよ!」


アーセナル・ヴァルキリーの艦首甲板上ハッチが開いていく、床に書いてある警告表示には高電圧注意と書かれている。付近の甲板作業員が退避し始めた。

退避が完了したタイミングでハッチは全開放し、中から甲板荷電粒子砲が姿を見せた、高さ7m、長さ40mはある砲身、海に浮かぶ駆逐戦車の様だった。


「エネルギー充填開始、艦隊と射線をリンク、射線内の艦艇は速やかに退避!」


ミサイルはホンダの予想通り90%近くが破壊された。

射線上の艦艇は左右に回避を始める、眩い光が船首を覆い、サイサリス基地からでも見える程だった。


「敵空母、原因不明の発光を確認!」


「水門だ、防護シールド展開しろ、一撃しか耐えれんだろうがな。」


アキ達は上空からその光景を眺めていた。


「アーセナル・ヴァルキリーの新兵器…」


「降下5分前、ゲート開放!」


輸送機のゲートが開いた、防空圏外ギリギリから眺めるフィサリアの街並み、こんな形で再び訪れる事になるとは思いたく無かった。

アキはモニター越しに映る2人のアーマーフレームを見た。


「ソラ、オサム」


ふと呟いた、ソラもオサムもやる気満々の台詞を返してきた。


「行こう…!」


「降下開始!対空砲火に気をつけろ!」


ランプが赤色から緑に変わる、ゆっくりと前進し、輸送機から飛び降りた。モニターにいっぱいのフィサリア、出迎えてくれるはずもなく、厚い対空砲火に晒された。

よく見ると市街地にアーマーフレームを配備しており、周りには逃げ惑う民間人の姿も見えた。

そう、サイサリス基地は避難勧告を出していなかったのだ。


「情報と違うぞ!市街地にアーマーフレームを配備してやがる!」


「民間人を盾に使うつもりね!()()()ならやりかねないわ!」


次々と降下するアーマーフレームにサイサリス基地司令部は混乱を極めていた、その中で1人だけが、落ち着いた表情で空を見上げていた。


「クククッ…さぁ来い、ここで全て終わらせる」


サイガは目を見開き、心の底から武者震いしていた。

アキは基地の規模に対して防衛システムが少ない様に感じていた。


(少ない…これだけの地域ならもっとあるはずだ)


──


「5.4.3.2.1…」


「撃てぇ!」


アーセナル・ヴァルキリーから青い光線が海を切り裂きながら突き抜けて行った。


「貫けぇぇぇぇ!」


荷電粒子砲は見事命中、命中した箇所が溶解し火花の様に飛び散った、だが防壁に阻まれて肝心の水門は致命打にすらならなかった。


「水門破壊は失敗、繰り返す水門破壊は失敗!」


「そんなもんですんなり突破できると思うなよ素人どもが」


「大佐!早く避難しましょう!」


「アクトロスとブレードウルフを展開しろ、空挺部隊を叩き潰せ」


--サイサリス基地 地下第4格納庫


サイレンと共にオレンジ色のランプが回っており、ゆっくりとゲートが開いていきエレベーターが上昇を開始した、載っていたのは熊の様な見た目でヒズメを持ち、戦艦の主砲を背負っているグレーの機体と、それに随伴する様に狼の様な見た目で顎に高周波ブレード、肩部リニアレールガンを搭載した機体が2機、合計3機搭載されていた。


『GMF-34アクトロス及びBLF-05ブレードウルフ出撃!』


「戦闘AI起動します」


赤い目が光りその30mはあろう巨体が立ち上がった、少し猫背でまさにアクトロス(熊)そのものだった。

フィサリアの住民はその姿に恐怖のあまり立ち止まってしまった。


「ばっ……バケモノだ……」


「こちらはセト、303技術戦闘隊聞こえるか」


「こちら303技術戦闘隊、ソラ聞こえます」


「巨大アーマーフレームが確認された、お前達は唯一の新型機だ、頼めるか」


3人が聞いたセト隊長の声は少し不安そうな声だった。


「了解です、破壊します!」


「セト隊長、俺たちは隊長無しでも十分戦えますよ!」


「ふっバカ言え、俺がいなくちゃ何も出来ないくせに」


その頃、サイサリス基地司令部はざわついていた。


──民間人保護の要項を破棄、非戦闘員及び民間人に対しての無条件発砲を許可する。


異例の命令だった。

余りにも暴力的な命令に皆、背筋が凍っていった。


「これは余りにも……」


「なんだお前らフィサリアは国連防衛派だ、守る必要など無い」


「こんなの軍人のすることじゃ無い、悪魔のする事だ!!」


バンッ!


発砲音と共に盾をついた兵士は倒れた。


「悪魔はどっちだ?」


そう言いながらサイガは他の怯える兵士達を舐める様に見た。


「綺麗事など抜かすな、さぁ行け現時刻を持ってフィサリアを敵と判断する」


防壁の前に逃げ場を求めて大量の人々が押し寄せて来た。すると防壁の上面に配置された砲台が起動し、その人々目掛けて攻撃を始めた。逃げ場を失った民間人達はただ走り回るしか無かった。


「こっちに撃って来たぞ!」


「まともじゃ無い……こんなのまともじゃ無い!!」


降下中の部隊はただその光景を傍観するしか無かった。


「民間人に被害が出る、無闇に発砲をするなよ!」


「このままやられているのを見るしか出来ないのか……!」


「まずは基地に張り付け、状況の整理はそこからだ!」


アーマーフレーム隊は打ち上げられてくるミサイルからフレアを出して回避し、徐々にサイサリス基地へ張り付いていった。

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