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ひこうき雲  作者: 三毛
第七章 nostalgic
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第五十五話 魚影

『各艦艇は接岸急げ!』


戦艦や巡洋艦が接岸を始めた、海面が唸りをあげている。少し離れた所でアカネ少尉は座り込み、踵を岸壁に当てながら、立った波がぶつかる様子を眺めていた。しばらくするとソラが潮風に当たりに来た、ソラはアカネを見つけたが、すぐに視点を変え、海を見始めた。



ふと()()()の事を思い出した。


(どうしてあの時、待機の命令を無視したんだろう…)


考えるまでも無く、ソラはアカネの方へと足を運んだ。


「ねぇ、アカネ少尉」


「えっ?な、なぁに」


少しオロオロしていた、何か隠している様な、恥ずかしそうな雰囲気を出していた。


「どうして、あの時命令を無視したの?プロメテウスに居たんでしょ?」


アカネは俯いた、何かが喉に詰まっている様で、ソラですら違和感を感じていた。首を傾げ、不思議そうに横に座った。


「ん?」


「いやっ、偶々だから…」


咄嗟に嘘をついた、ソラはそれを聞いて少し笑い、アカネの俯いた顔を、下から見上げる様にした。


「ありがとっ」


──っ!?


まさかの言葉にアカネは前を向いた、恐る恐るソラの顔を見ると見たことない笑顔を見せていた、一気に色々な感情が心の中で暴れ始め、泣きながら謝った。


「ウッ…ごめんなさい…あんな事言ってごめんなさい…」


「あははっ、いいよ全然、実際あの時来てくれなかったらみんな死んでるからね」


一気に肩の荷が降り、アカネはとても嬉しそうだった。ニコニコしながら、また踵を壁にトントンと当て始めた。


「えへへっ」


40分後に新第二艦隊は全艦着岸完了した──。

旗艦アルタイル艦長ヤガミ中佐は下船後、ホンダの元へと向かう。

ホンダはアーセナル・ヴァルキリーの第二艦長室で、まだ作戦について考えていた。


(う〜ん、どうもあの防壁がなぁ)


艦長室を誰かがノックしている。


「お久しぶりです。新第二艦隊アルタイル艦長ヤガミ中佐、指揮下に入りました」


「ヤガミ君か、入ってくれ」


「失礼します!」


中佐とは思えない元気のいい声だ、身長169cm、すらっとした体型、少し面長の整っている顔つきで、黒い軍服の肩には中佐の階級章がついている。


「難しそうな顔してますね、大佐」


「まーな、サイサリス基地──。確か防壁があるんだったよな、あの防壁に空母三隻が並べれる大きさのゲートが二つある、あそこを突破してそのまま基地を奪取したい」


「我々の基地だった時からありましたね、高さ30m厚さ40mのコンクリート防壁が四方10kmずつ。確か街にも半分ほど被ってましたね?今、潜水艦ヤマアラシが偵察に出ています、続報を待ちましょう」


過去に国連防衛軍戦闘艦が攻撃を敢行したが、厚さ40mもある防壁に、榴弾はおろか徹甲弾でさえ刃が立たなかった、その後反撃を受け戦闘艦は沈没した。


「ユーマがいればな、アイツは奇抜な考えの持ち主だが、アイツの作戦成功率は90%は超えてた」


「最期にお会いしたかった、あの日我々も出撃していたんですが」


ヤガミ中佐率いる艦隊は、アーセナル部隊同様遊撃部隊だった。()()()も緊急出航していたが、アーセナル部隊が撤退を始めたと言う報告を聞いて、同じく撤退した。

ヤガミ中佐もアーセナル出身で、その後補給艦、フリゲート艦の艦長を勤め、29歳と言う若さで新第二艦隊司令にまで上がった。


「なんせ、今回の戦いは失うものが多過ぎる。喪失感でどうにかなりそうだ、これはいつ終わるんだ」


「我々、金だけはありますからね、──多分この戦争はまだまだ終わりは無いと」


ホンダは深くため息をついた。


「はぁぁ〜…嫌だ嫌だ、人より幽霊の方が可愛く見えてくるよ」


「相手は報復、こっちは行き当たりばったりの政治的な軍事作戦ばっかり、このままじゃ敗戦します。細かい所は置いといて、戦い方としては相手の方が一枚上手かと」


「上が終わってんだよ、ウチは──。総司令くらいだよ、マシなのは」


「ですね」


「すまんすまん、要らない話を」


「いえいえ、──所でなんですが、()()()()は?同じ部隊でしたよね」


「元気にやってるさ」


机の中から一枚写真を取り出した、第303技術戦闘隊の6名が結成された時の写真だ、この写真は唯一全員が揃っている。今ではセト、アキ、ソラ、オサムの4名のみだ、他のメンバーは激戦の中で戦死するも報告も無しに消えていった。


「フフッ、元気そうで良かった」



--フィサリア近海 水深300m

新第二艦隊所属 原子力潜水艦ヤマアラシ


ヤマアラシはまもなく開始される作戦の情報収集に勤しんでいた。


「音感センサーに反応あり!」


「どうせウチの空母だろう、三隻はいるからな、雑音くらい混じるだろ」


1,200mもある艦船が近くにいるため、離れていてもかなり雑音が混じる、誰もがそう思った瞬間だった。


「いえ、我々より50m下にいます」


「なに!?潜水艦かアーマーフレームか?この海域にはヤマアラシ以外居ないはずだ」


「可動音です!こっちへ近づいてきます!」


「戦闘配置、対潜魚雷発射!」


海底から2本の腕が広がり、ヤマアラシを掴み取った。


「うわぁっ──、損傷は!」


「艦首及び艦尾に浸水発生…圧壊します…」


はっきりと見えない海の中、目一杯腕を左右に広げ、ヤマアラシを引きちぎった、ギチキヂと金属の千切れる音が辺りを広がった。この情報は即座に流れたが、軍はサイサリス及びフィサリア奪還に向けて、敢えて行動を取らない判断をした。

ヤガミは暗い表情で艦長室を訪ねた。


「ホンダ艦長、ヤマアラシ轟沈しました」


「……こちらからは行動はしない」


「敵に好きな様にやらせるのですか!?」


ホンダは俯いた、一瞬、ホンダの顔を見たヤガミは思わず腰を抜かしてしまいそうになった。

──ホンダの表情は鬼の形相に変わっていた。


「いいや、それ以上にして返す」


「当日はベース001よりペガサス戦略爆撃機200機による、空爆の支援があるそうです」


「俺たちはあの水門の破壊、アーマーフレームの投入、民間人の救出が最優先だ。総司令部め…勝手な事を」


「しかしなぜあそこなのでしょうか、あまり戦術的価値はないと思いますが」


少しの間を置き、話し始めた。


「噂なんだが、あの付近にポイント・ゼロがあるそうだ。──キラーホエール、総司令部は早い所あいつを破壊したいんだろう」


「フィサリアは中継拠点ですか…やっていることは反国連軍と同じですね」


ホンダ艦長はまだ鬼の形相だ。


「全くだ!……アーマーフレームによる空挺降下作戦も実行する、アキ達には悪いがやってもらう他無い」


「故郷奪還──。こんな言葉、生きている間に使いたく無いですよね」


「あの頃の被害者は、俺が支えてやるしか無いんだ」


()ですか…おっとこんな時間、俺は一回アルタイルに戻りますね」


「おう…」


ホンダ艦長は考え込み始めた、ヤガミはあまり深追いせずに1人の時間を作る為、艦長室を後にした。


「しっかりしろ俺!」


ホンダは頬を両手で引っ叩いた。


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