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ひこうき雲  作者: 三毛
第六章 ひこうき雲のその先
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第五十一話 そら

『チェックダウンリストクリア、AF-02FB、マスドライバーカタパルトデッキへ移動』


床がじんわりと動き始め、アキのAF-02FBはマスドライバーカタパルトへ向かう。


(よし!よし!いけるぞ俺はやるぞアキ!)


アキは頬を両手で軽く叩き、気合を入れた。


『デッキ接続完了、発射用意、カウント始めます』


ケーブルが引き抜かれ、ブースターの点火を開始した。


「カウントどうぞ!」


『10、9、8、7…』


ブースターの出力がグングン上がっていき、120%を超えた。


(来る…!!)


『…2、1!発射!!』


オペレーターが、発射の合図と共にレバーを引き上げた、その瞬間、AF-02FBのブースターは燃え上がる様に燃焼を開始。見る見るうちに速度と高度が上がっていく。出力が訓練の時とは比べ物にならない気がした。


「500…800…1000…うぐぐぐっ…あれぇ、前よりキツいぃ…」


「第303技術戦闘隊、出るぞ!」


セト隊長率いる、第303技術戦闘隊は滑走路を離陸、それに合わせてアグレス隊も離陸を開始した。


ヤサカ大尉がCICのモニターを確認していると、不安げそうな表情を浮かべた部下が近寄って来た。


「ヤサカ大尉、大丈夫ですか?余りにも熟練度が…」


「大丈夫さ、あの子達ならきっと…」


そう言いヤサカ大尉は、再び上昇していくAF-02FBの背中を、モニター越しに、ただじっと見つめていた。


「2500を超えました!2.5kmでぇす!!2.5ぉ!」


AF-02FBは、とてつもないスピードで上がっていく、アキは落ち着いて報告など出来ず、叫ぶことでしか報告ができなかった。


『報告ありがとう、このまま作戦を続行する』


「現在、AF-02FBは高度2500mを突破、アーマーフレーム及び、哨戒部隊は2300m付近です」


「 CAPはAF-02FBから離れない様に!」


青々とした空、言葉では言い表せない程綺麗だった。


「ぐっくぅ…空が綺麗だ」


Gでシートに押さえつけられながらもアキは、その光景をしっかりと目に焼き付けていた。


5分後、AF-02FBは高度7000mへ到達した。


「高度7000、第一段ブースタージェットソン」


「了解、切り離し後40秒で爆破処理する、警戒せよ」


アキのAF-02FBはブースターを切り離した。


「第二段ブースター点火!」


ブースターを点火し、さっき以上に加速する。すぐに8000mを突破した、戦争中で民間機は7500mまでと高度制限がかけられているため、この世界のどの航空機よりも高く、綺麗な放物線を描いた飛行機雲が一本、青々とした空を切り裂いている。


アキは、自分が見たかった空はこれかもしれないと感じた、下を見れば、いまだに交戦中の地域や黒煙が立ち上っている地域が見え、少し嫌気がした、徐々に景色が丸く、地球の形に近づいてきた頃、高度は10000m、カーマンラインを超え、定義上、AFは宇宙へと進出した。


「うおぉぉ!!やったぞぉぉ!」


ベース78の管制室にいた職員達は、書類を目一杯上に放り投げ、喜びを分かち合った。泣くものも居れば、その場で唇を啄み合う男女までいた。ソラやオサムも胸を撫で下ろし、拳を大空に突き上げ、喜んだ。


宇宙(そら)だ!」


「やったな!アキ!お前が世界初の宇宙まで行った、アーマーフレームパイロットだ!この大馬鹿野郎が!」


アキのAF-02FBはしばらく無重力空間を漂った、ふわふわと上も下も無く、何も抵抗が無い感覚、ペンなど、固定されていない物が目の前を通過している、初めての感覚に酔いそうになっていたが、それどころでは無く。嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。


「よし、第2段ブースターを破棄して、第3段の減速ブースターを使って降下しよう、気をつけて」


「ヤサカ大尉、了解しました!」


喜びムードから一転、管制室には緊張感が走った。プロジェクトの最終段階、パイロットの生還がまだ残っていた、一気に慌ただしくなり、全員が所定の位置に着いた頃だった。


「ヤサカ大尉!!AF…いや、アキ少尉の付近に高熱源反応!!恐らく敵機です、数は1!ギャラルホルンを撃墜した機体かも知れません…」


ヤサカ大尉は言葉を失った、ここまで一切レーダーに映らず、目と鼻の先にまで接近していた、明らかに射程圏内に入っている、しかし、ここで下手にルートを変えれば、回収地点が大きく変わる、だからといって待機しているアグレス隊と303技術戦闘隊では間に合わない。間違いなく1対1の状況を作られた。


ヤサカ大尉はマイクを握りしめて、額に汗をかきながら、アキ少尉にミッションの破棄と即時撤退を促した。

ヤサカ大尉のポケットに入っていた携帯電話は、ずっと鳴りっぱなしだった。


「アキくん!ミッ…ション…h破棄だ、今すzベース7nに戻って…く…れ…」


不明機のECM攻撃で通信が上手くいかず、遂には途切れてしまった。不明機はそのまま上昇、アキの上空を取り、隙だらけのアキはただの落下している的になってしまっていた、アキは不明機とすぐに判断し、降下を開始した。


「あれは間違いなく敵だ!ヤサカ大尉との通信も途絶えた、ECMか…うおっ!」


コックピットの前を赤いレーザーが掠めて行った、さっきまで青々としていた画面が、一気に血溜まりの様な色に変わった。アキは次の一手は必ず当ててくると予測し、第3段減速ブースターを残しつつ、エアブレーキでゆっくりと減速していた。

第303技術戦闘隊は上昇を開始、アキの機体と入れ違いになる形で交戦を開始した、アグレス隊は距離を取り、中距離空対空誘導弾を発射したが、すぐに回避されアキの背後に着いた。


「ウチのオルカを随分可愛がってくれたそうじゃねぇか」


レーザーライフルを放棄し、ショットガンに切り替え発射した、ペレットが数発命中し、致命打にはなら無かったもののブースターから燃料が漏れてしまっていた、セト、オサム、ソラはスカイボードの機首を目一杯上げ目標をロックした。


「誰だお前は」


余裕のある戦い方、あのオルカを呼び捨てに出来るほどの人間、その場にいた全員が只者じゃないと悟った。


--空母プロメテウス


「EEG!EEG!アカネ少尉、応答せよ!ただちに機体から降りるんだ!」


「どうした」


慌てふためく管制官、上官が甲板のカタパルトデッキを確認すると、アカネ少尉のAF-117EEGが強制発艦しようとしており、AF-117EEGの周りには誘導員が必死に機体を止めようと身体を張っていた。

上官は静かに目を閉じ、深く呼吸をした、管制官の肩に手を添えて、静かに首を横に振った。


「行かせてやれ」


「しかし!!ヤサカ大尉の指示もなく!!」


「いいから」


上官のまさかの発言に管制官は明らかイラついていた、肉眼でも戦いが見える状況下で、次沈められるのはこの艦かも知れない、と管制官は怖くて仕方がなかった。



自由落下中のAF-02FB(アキ搭乗機)は、今までにない強敵と遭遇する!

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