第五話 部下
離陸を完了した第125戦闘飛行隊
空中管制機と合流した途端、新型機の報告が入った。
「こちら空中管制機フィッシュアイ、先程入った情報によると偵察部隊がレーダーから消えたとの報告があった。これより第一種警戒体制に入る」
「こちらアルファリーダー了解、聞こえたか!?偵察部隊が消息を絶ったらしい、各機警戒!索敵陣形!」
フォーメーションが密集体型から広がっていく。
アキはレーダーでどんどん大きく見えてくる艦隊に、焦りを感じていた。
「隊長、敵は我々より装備は劣ってあるはずです、ここからでも届きます!対艦ミサイルを撃ちましょう!」
「待て、ひとまず落ち着いて行動しろ」
エリス少尉にも焦りが感じられる、アキ達は緊張で口を動かす事すら出来なかった。
「ん?あれは…?」
ソラが見たそこには黒い積乱雲があった、ソラはその中で白い翼の様な物が見えた。鯨の様な鳴き声の様な音が聞こえた時だった。
「うあぁ!?」
マルクス中尉の叫び声と共に、通信が途絶えた。
「どうした!?応答しろ!何処から撃ってきたんだ!」
マルクス中尉の機体が赤く燃えながら真っ直ぐ堕ちていく。その時ベース398から通信が入った。
「アルファ隊聞こえるか、消息を絶った部隊から写真が送られてきた、写真を解析した所恐らく敵の新型機だと思われる、その他巡洋艦9隻、空母2隻、フリゲート艦4隻が確認された」
「フィッシュアイはどうなっている!?…ダメか、各機!戦闘開始!」
隊長の掛け声で全機各々の方向へと散らばる。それと同時に反国連軍艦隊も攻撃を開始、対空ミサイルを発射した。
「なんだあれは!?人か!!?上方向!」
オサムが差した方向から人型の何かが降ってくる、その人型はアキ達の方に、ライフルのような物を向けて発射してきた。
「痛っ!被弾した!」
アキの機体のど真ん中に弾丸が命中、そのまま流れるように黒煙を吹いた、コックピットの横を敵の新型機が通り過ぎてゆく、その時アキが見たのは赤い死神のエンブレムだった。
「アキくん!大丈夫?!」
「くそ!アキの機体はまだ飛べるな!アルファリーダーより新人三名へ!直ちに空域から離脱!空母アーセナルへ迎え!」
「ですが!隊長はどうするんですか!」
「いいかオサム!お前達でどうこうなる相手じゃ無い!それは分かっているだろ!この情報をただちに本部に送るんだ!アキとソラを連れて早く逃げろ!ここは俺たちベテランで行く!──これ以上部下を失いたくない」
オサムは今にも口から出そうな言葉をぐっと堪えた。
──間違いなく最期の言葉だと確信した。
「隊長…絶対帰ってきてくださいね」
「あぁ」
オサムは隊長が少し微笑んでる様に感じた。
「行くぞ!エリス少尉!マルクスの弔い合戦だ!」
「おうよ!」
アキ達はミラー越しに遠ざかって行く機体を眺めることしか出来なかった。
「リミッターカットだ…!FGの全開を見せてやる!」
ユーマ中尉は機体の安全装置を全て解除した、その暴力的な機動は本当に人が乗っているのかと錯覚する程だった。
「うぐぐ…Gに押し殺されそうだ…だがあいつらが空域から出るまで俺は耐えてやる」
機体が白煙を吹き始めた、エリス少尉のIFF反応はすでに無くなっていた。
アキ達の機に通信が入った。
「こちらは空母アーセナル、貴隊の収容準備完了いつでも降りてこい」
FG15戦闘機の推力はアメリカ軍F15戦闘機の6倍もあります