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ひこうき雲  作者: 三毛
第五章 絶望の再来
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第三十八話 side story 名も無き兵士達 no.1

この話はベース001襲撃で生まれた、また別の物語です

ベース001 国連防衛軍総司令部は反国連軍の猛攻を受け、混乱している、この話はその混乱の中から生まれた物語


1月29日 襲撃当日

-F区画 第16防衛中隊-

ウォルター隊長


「隊長、家族ですかい」


「あぁ俺の息子と娘と妻が写ってる、俺の地元が反国連軍のアークシェル基地の近くでな、今は疎開してもらっているんだ」


ウォルターの階級は中尉、アキ達とは出身地が違い、国籍も違うが、アキ達と入隊理由は似ていて、8年前の戦闘で家が反国連軍によって破壊され、住む場所を失った。もうこれ以上不必要な被害者を出さない為に、日々精進している。


「いいねぇ、俺の家族も生きてりゃなぁ」


「ライカ…この戦いが終われば一緒に墓参りにでも行こう」


ライカ少尉は第16防衛中隊の副隊長、ウォルターより2歳年上で、隊長業務を兼任されている。部下やウォルターからの信頼は熱く、休日もよく2人で飲みに行っている。


「それより、もうB区画は堕ちかけてるってよ」


「無理もない、皆人を殺した事ないんだ、なんとか戦えてるのは現場の部隊のみだ」


『HQより各隊へ!B区画を放棄!くりかえす、B区画を放棄!』


この無線が入った瞬間、ウォルター達の左前方の隔壁が爆発、煙の中から無数の弾丸が飛んできた。


「うおっ!?もうこんなところまで来てるのか!CP、CP!こちら第16防衛中隊、F区画、西F05ゲート爆発!敵部隊を確認した、これより交戦する!」


※CP Command Post 司令所、指揮所


『了解、何としても食い止めろ!』


「気張っていけ!ここを死守するぞ」


第16防衛中隊、総勢12名は敵部隊との交戦を開始、実践経験があるのは、その中で5人しかいなかった。目視で確認しただけでも敵の数は20名で単純な戦力では相手の方が上だった。


「隊長!弾が当たりません…!」


「深呼吸して、落ち着いてから狙え!」


新兵は怯えながら発砲する。無数の発砲音が通路全体に響き渡り、耳元でしか喋ることが出来なくなった、足元では高い金属音を出しながら、エジェクションポートから飛び出した薬莢が散乱していた。


「CP、こちら第16防衛中隊、増援を要請する!」


『こちらCP、増援は許可出来ない、現状の戦力で対応せよ』


「ちっ!このままじゃ突破されるぞ!」


「手榴弾!伏せろ!」


戦闘開始から約1時間が経過、敵部隊はあらゆる手を使い突破しようとしてくる、基地のあちこちで戦闘が起こっている為に、増援を出す余裕は全く無く、全部隊がカツカツの状態だった。


「あっ…あぁ…あぁぁ!」


1人の新兵が立ち上がり、フルオートで弾をバラまき始めた、彼の目は死んだ魚の様な目をしていた。


「おい、伏せろ!殺されるぞ!」


そう言い、ウォルターが手を差し伸べた瞬間、辺りに血が飛び散り、新兵が脱力したように倒れた。


「うわっ!頭に当たりやがったのか、こいつを隅っこに置いておけ!いいか、今みたいになるからな!勝手な行動は控えろよ!」


「ひいぃ…!」


ウォルターがマガジンを再装填しようとしていた時、中々マガジンが入らなかった、確認してみると手が震えており、その時に「自分も死ぬのが怖い」、そう感じてしまった。ウォルターは深呼吸し、震えを我慢しながらマガジンを刺した。


(こんな時に動揺するなんて…俺もまだまだ半人前だな)


再び胸ポケットから写真を取り出した、ウォルターはその写真を汚れた手袋で拭き取り、眺めながら少し微笑んだ。その時ウォルターの何かが吹っ切れた。


「撃ちまくれ!グレネードは!?」


「あります!グレネードいきます!」


隊員が投げた手榴弾がボンッ!というか破裂音を響かせながら爆発、その一瞬だけ弾幕が止んだ。ウォルターはここぞとばかりに攻撃の勢いを増した。


「今だ!前進しろ、GOGO!!」


背中を叩き、部下の気合いを入れながら走り出した。再度敵の弾が雨のように飛んできた。


「その通路だ!走れ走れ!」


「ぐあっ!痛ぇ!」


最後尾を走っていた兵士を庇うために、ライカが被弾してしまった、腹部から大量の血が滝のように流れており、ライカは意識が朦朧としている。


「おい、しっかりしろ!」


「ライカ少尉!しっかりしてください!」


「あー…隊長ぉ…酒飲みたい…」


「こんな時に、何を…」


「いたぞ!撃て!」


敵部隊が追い込んできた、敵の射撃で一気に4名が射殺された、ウォルターは意識が朦朧としているライカを物陰まで引きづり、手当しようとしたがライカがそれをさせようとしてくれなかった。


「どうした、死ぬぞ!?」


「もういい、もういいです隊長、先、行ってきます…」


ライカは何故か幸せそうだった。


「家族の所行ってくる、また会って飲みましょうよ隊長、俺は一生あんたの部下でいい」


「おい!おい!」


ライカからの返事は無かった、最後の顔はとても笑顔だった、銃撃は一切止まずに膠着状態が続いていた。ウォルターはライカのドックタグを取り、自分の首にかけた。

文字数がオーバーしたのでno2まで伸ばします!

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