第二節 これは必然的に
ジンの近くにいたその人影は、需籠であった。
「禊が終わったら、座敷牢に来い。」
「は?何でだよ?俺は、ちゃんと結界を張れただろ!」
「喋るな!口を利くでない‼どこの誰が聞き耳を立てているか分らんのだぞ!」
「……。」
「それで良い、お前は相槌だけをしていろ、分かったな?」
言いたいことだけ述べると、需籠はこの場を去ってしまった。
クソ、あの野郎今に見てろよ
こんな所、さっさと抜け出してやる。
そもそも俺は、男何だぞ?いつ迄も巫女の振りなんて無理な話だ。
今は良い俺はまだ、十四歳になったばかりだ、でも時間の問題だそんなの大人になる前に俺はきっと口封じに殺される。
本当の巫女が見つかり次第俺は、お役目御免だろうな俺の立場は一時凌ぎに過ぎない、男なのに巫女の力が使えたから急遽誂えたんだ。
ここに連れて来させられたのは、四年前になるな俺が十歳で浮浪児だった頃その時に奴隷の入れ墨を胸の中央に刻印させられたが、今はそれが俺には存在しない白夜狗が最後の力を使って消してくれた。
哀れみだったのか、慈悲なのか今となっては分からない
まやかしの巫女の俺に情けをかけるなんてな
そのおかげで、あの野郎の命令を聞かなくても、体中に激痛が走ることは無くなった。
俺は、この島から抜け出す機会を伺っている
島には、一週間に一度本土から、物資を届ける為に定期船が訪れるそれを狙うしかないが監視の目が厳しいのと、海を泳いで本土に渡るのは自殺行為だ、潮の流れが速すぎて溺れてしまうし、異形が海には漂っている。筏も考えたが、作る暇も無いし道具も材料も無い。
万作尽きた…だが諦めねぇ絶対にアサに会うって約束したんだ。
「来るのが遅いぞジン」
「………。」
「まぁ良いではないですか、ジン様にとって新たな聖獣との対面なのですから」
誰だ来いつ?初めて見る奴だが気味が悪いな、て、今何て言った⁉新たな聖獣?不可能だろ白夜狗が死んで力の付与の受け渡しは出来ないんだぞ⁉
「さぁご対面と行きましょう、こちらが新たな聖獣の七星です。」
聖獣の七星は、白い生き物を掛け合わせた姿をしていた。
頭から胴体と尻尾は狼、上腕は爬虫類の腕、背中には大きな鳥類の翼、下半身は豹、体全体に所々に鱗が見えた。
口輪に手錠と足錠、鉄球と鎖、まるで猛獣を縛る拘束具は、その生き物の危険性を表していた。
「ガシャよ、これは従順であるのだろうな?」
「勿論でございます。今、その証拠をお見せいたしましょう。」
そう言うなり、ジンの左手首を掴むと小刀で手の平を切りつけた。
「何を!「必要な事でございます。需籠様。」
痛ぅうぅぅ~!何粋なり切りつけやがるこのクソ爺!!、声を我慢するの大変何だぞ!?
て、何そのヤバそうな猛獣の口元に俺の手、近づかせてんだよ!
ジンの手から血が滴り落ち、七星の口元に流れ着いた。
「血の盟約の元、汝を命をもって守護する事を契る」
そう、唱えると血は文字のような形になり、胸辺りに印を刻んだ。
「これにて、七星は命尽きる限り、ジン様をあらゆる事からお守りすることをお約束致します。」
「ほぉ…これは良いな、では次は私との契約をして貰おう」
「畏まりました、先程行った契約よりも従順になる盟約をいたしましょうか?」
「何を当たり前のことを申すか?、早く済ましてくれ!」
需籠は、そう言うと自ら手首を差し出した。
「失礼いたします。」
くそ、人を実験台にすんじゃねぇよ!でもこれで、俺はあの七星に守って貰えるようになったのか。
そう、考えていたら七星と目が合った。
次回予告
第三節 そして盟約