最終話
フランソワーズが頷くと、ステファンのエスコートを受けて騒がしい会場を抜けていく。
二人でバルコニーに移動した。
涼しい夜風が二人の間をすり抜けていく。
フランソワーズの髪が乱れると、ステファンはそっと耳にかける。
フランソワーズもステファンの夜空のような黒髪を撫でて、整えながら二人で笑い合っていた。
「フランソワーズが魅力的すぎて誰かに取られてしまうのではと心配してしまうよ」
「ありえませんわ」
「会場で君の美貌がどれだけ視線を集めていたか知らないだろう?」
「……そんなことないと思いますけど」
「はぁ……フランソワーズは自分の魅力をわかっていないんだ」
こうして常にフランソワーズを心配しているステファンは随分と過保護になってしまった。
しかしフランソワーズはステファンしか見ていない。
フランソワーズはステファンの頬を両手で挟むようにして目を合わす。
「わかっていないのはステファン殿下の方ですわ」
「え……?」
そう言ってフランソワーズはステファンの唇に触れるだけのキスをした。
一瞬ではあったが、やはり自分からするとなると恥ずかしい気持ちが勝る。
ステファンはフランソワーズの行動に驚いているのか大きく目を見開いていた。
「わたくしがステファン殿下しか見ていないということを、いい加減わかってくださいませ!」
「……!」
フランソワーズが気持ちを伝えても、ステファンは心配ばかりしている。
それにステファンだって会場にいる女性たちの視線を集めていた。
フランソワーズだって、ステファンが女性を見つめていたら嫉妬してしまう。
そのことをわかってもらおうと口を開く。
「ステファン殿下こそ……よそ見はしないでくださいね?」
セドリックがマドレーヌを選んだことは頭ではわかっていたとしても、トラウマのようにフランソワーズの中に残っている。
ステファンが他の令嬢と浮気をするなどと思ってはいないが、この先に何があるかはわからない。
フランソワーズは唇をキュッと結んでステファンを見る。
こちらを見つめたまま動かない彼は次第に頬が真っ赤になっていく。
そのままステファンの体から力が抜けていき、額を押さえながらステファンは溜息を吐いた。
「はぁ……フランソワーズはずるいよ」
「なにがですか?」
「可愛すぎるんだ。僕はどんどんフランソワーズのことを好きになる」
「……!」
「フランソワーズが他に目移りしないように僕も頑張らないとね」
「ですからわたくしは……っ!」
ステファンがフランソワーズの腰を抱いて引き寄せる。
いきなり近づく距離に驚いていると再び重なる唇。
先ほどの仕返しとばかりに深い口づけにフランソワーズはステファンの胸を叩くと、やっと顔が離れた。
「もう絶対に逃がさないから」
「……っ!」
「心から君を愛してる、フランソワーズ」
ステファンの甘いセリフに、今度はフランソワーズの顔がバッと赤くなっていく。
ステファンにもう一度抱きしめられたフランソワーズは彼に胸を預けながら呟くように言った。
「わたくしもステファン殿下を愛しています。一生離さないでくださいませ」
「離せるわけないだろう?」
「ふふっ、約束ですよ?」
「ああ、この命が尽きるまで君を愛すことを誓うよ」
優しい言葉にフランソワーズは瞼を閉じた。
幸せに胸がいっぱいになりながらも、ステファンとの心地のいい時間を過ごす。
「……ありがとうございます」
フランソワーズの言葉にステファンは優しい笑みを浮かべたのだった。
end
最後までお付き合いしてくださった皆様、ありがとうございました(*´ω`*)
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