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【2025.02.15 書籍発売】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜【受賞しました  作者: やきいもほくほく
四章

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「……!」



マドレーヌは正気に戻ったのだろうか。

言葉の意味がわからずにいたが、彼女の足先が宝玉のように灰になり崩れていくのが見えた。

足が消えて、マドレーヌは目に涙を溜めながらこちらに手を伸ばして助けを求めている。



「こんな物語はありえないっ、助けてぇ、助けなさいよ! たすっ……!」



そして口元まであっという間に崩れ去ってしまったことで、悲痛な叫び声はピタリと聞こえなくなる。

どうやら悪魔に乗っ取られていたマドレーヌは、宝玉と同じように灰になってしまう。

マドレーヌがいた場所には灰が積み重なっていた。


(マドレーヌは完全に消えてしまったの?)


しかしフランソワーズはわかっていた。

今まで祓った悪魔が取り憑いたモノは灰になり、二度と戻らないことを……。

彼女は恐怖と絶望感の中、物語からいなくなってしまった。

マドレーヌをずっと抑えていたイザークとノアもホッと息を吐き出している。



「フランソワーズ……?」



ステファンに名前を呼ばれたフランソワーズは顔を上げた。

すると彼はフランソワーズの汗で額に張り付いた前髪をすいた。

フランソワーズも左手を伸ばしてステファンの頬をなぞる。



「……フランソワーズが無事でよかった」


「ステファン殿下がわたくしに力をくれたんです」



そんなフランソワーズの手の甲を包み込むようにして、ステファンの手のひらが重なる。

フランソワーズは目を閉じて互いの無事を確かめ合っていた。


宝玉があった部屋から出ると、シュバリタイア国王や王妃、セドリックは唖然としていた。

灰になった宝玉を見て、どうやら脅威が去ったことは理解できたようだ。

三人は涙を流して喜び、手を合わせている。

セドリックに名前を呼ばれたような気もしたが、フランソワーズは無視して、その場を通り過ぎた。


フランソワーズはすぐにフェーブル王国に帰ることを提案する。

それはステファンからの圧が凄まじかったのもあるが、これ以上ここにいる必要性は感じなかったからだ。


城から出ようとすると、廊下には久しぶりに見る父親、ベルナール公爵の姿があった。

どうやら城で倒れていた中に、ベルナール公爵もいたようだ。


(マドレーヌを部屋から出すように説得でもしていたのかしら)


マドレーヌは灰になってしまったが、倒れていた人たちには影響はないらしい。

ステファンやオリーヴが呪いを受けた時と同様に、マドレーヌも悪魔の宝玉に触れてしまい呪われたのかもしれない。


ベルナール公爵はフランソワーズの行手を阻むように立ち塞がる。

しかしノアとイザークが前に立ち、ステファンもフランソワーズを庇うように前に立つ。



「お前は最高の娘だ! やりなおそう。私たちなら最高の親子に戻れるはずだ。そうだろう?」


「……失礼します」


「待ってくれ! フランソワーズッ」



フランソワーズは目を合わせることなく、その場を立ち去った。

今更、ベルナール公爵の言葉がフランソワーズの耳に届くことはなかった。


(驚きだわ……まさかお父様がこんな風に縋ろうとしてくるなんて)


フランソワーズは嫌悪感に身震いした。


フェーブル王国に帰る途中、街を巡っていたが人々は正気を取り戻したことに安堵していた。

今は壊れた街の復旧や怪我人の手当てに忙しそうにしている。

教会でフランソワーズたちに食料や寝る場所を提供してくれた人たちは、涙ぐみながら感謝していた。

人々が正気を取り戻したのを確認してフランソワーズたちが国を救ってくれたのだと確信したようだ。

フランソワーズを『救世主』と称えて、お礼を言う人々で溢れかえっていた。


フェーブル王国に到着すると、先に国に戻っていた騎士たちに事情を聞いたオリーヴやフェーブル国王、王妃たちが門の前で出迎えてくれた。


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