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03

しかしマドレーヌはフランソワーズを超える聖女としての力を持っていた。

その力は強大で、物語の最後には悪魔の宝玉を灰にしてしまうほどに強いものになる。


物語ではフランソワーズはマドレーヌに対する強烈な嫉妬によって、少しずつ宝玉を曇らせていく。

マドレーヌがそのことに気づいたのは悪魔の宝玉が半分以上、黒くなってからだった。

フランソワーズに任せきりだったため、この事態を簡単に引き起こせたのだ。

そんな時に限り、強い力を持つ王妃は体調を崩していた。

悪魔が解き放たれる寸前、マドレーヌとセドリックによって再び宝玉は真っ白に戻り国を救うという話になっている。


そしてフランソワーズは悪魔を解き放ち、王国を破壊しようとした罪で死刑。

マドレーヌはフランソワーズの代わりにセドリックと結婚して、国を救った救世主として讃えられることになるのだ。


フランソワーズとセドリックの間には、特別な感情が芽生えることはなかった。

セドリックは完璧な王太子として今まで持て囃されてきたが、フランソワーズと婚約したことで、彼女を讃える声が増えていく。

見事に国王たちの期待に応えたフランソワーズに、セドリックが嫉妬していたのだろう。

セドリックはフランソワーズを嫌い、そばに寄ることはない。

ライバル視されている……そんな感覚すら感じていた。

形式的なパートナーだった二人の関係は外から見れば順調に見えたことだろう。


それもフランソワーズの義理の妹になったマドレーヌによってその関係は簡単に壊れてしまう。

ベルナール公爵の弟、ラドゥル伯爵と夫人が事故死。

残されたマドレーヌをベルナール公爵家で引き取ることになる。

フランソワーズの従姉妹で、マドレーヌは義理の妹となった。


マドレーヌは心優しい性格で、清らかな心を持っていた。

感情豊かで天真爛漫なマドレーヌは厳しい訓練を受けずとも、フランソワーズと同等の聖力としての力を持っていたのだ。

その力で、悪魔の力に苦しむ国民たちを助けていたそうだ。

マドレーヌは公爵領でも聖女として、領民を救いながら自分も知らないうちに力を高めていたのだ。

聖女の力は宝玉に使うことが当たり前とされていた。

しかし悪魔の宝玉の影響なのか、この国には様々な悪魔が人に取り憑いて悪影響をもたらすことがあるそうだ。

それをマドレーヌは祓っていたのだ。


マドレーヌの力でベルナール公爵家の評判はグングン上がり、皆に愛されるようになった。

フランソワーズは自分の役目を果たしながら、マドレーヌに対しては距離を保っていた。


久しぶりにフランソワーズが城から帰ると、あんなにも厳しかった父や母がマドレーヌを愛して褒め称えている。

フランソワーズの居場所はなくなり、すべてマドレーヌのものになっていたように感じた。

それを見た瞬間、フランソワーズの中で何かが壊れた。


両親はフランソワーズには見せない顔を見せていたのだ。

マドレーヌに笑みを向けて彼女を可愛がっている。

そんな姿を見たことでフランソワーズの心に亀裂が入ったかのように衝撃を受けることになった。


(どうして……わたくしはマドレーヌのように愛されなかったの?)


父と母に愛されているマドレーヌを見て、生まれて初めてマドレーヌに強烈な嫉妬と怒りを覚えた。

そこからフランソワーズはあらゆる手を使いマドレーヌを追い詰めようとしていく。

そんな心を悪魔に利用されて、宝玉を黒く染め上げるために利用されてしまうのだ。


そんな物語になるはずだったのだが、幸い前世の記憶と物語の流れを思い出すことができた。

前世では天涯孤独の身だった。

孤児院で育ち、ずっと素敵な家族に囲まれて過ごすことに憧れていた。

そのおかげで随分と可愛げのない性格に育ってしまったように思う。

しかし強くなければ生きてはいけなかった。

窮屈な思いと誰にも理解されない孤独、そして心ない声にも一人で耐えていた。


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