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【2025.02.15 書籍発売】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜【受賞しました  作者: やきいもほくほく
二章

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フランソワーズは眩しい光に瞼を開く。

ハッキリと意識を取り戻したのは明け方だったようだ。

肌寒さを感じていたが、ぼやけた視界で本が置かれていた場所を見る。

目の前の本はいつの間にか灰になって積み上がっているのが見えた。


(よかった。わたくしにもできたのね……!)


フランソワーズはホッと息を吐き出した。

知識だけでしか知らなかったが、どうやらフランソワーズにも悪魔が祓えるようだ。

そのことに安心して立ちあがろうとするが、足がもつれてしまいそのまま倒れ込んでしまう。



「いっ……!」



フランソワーズはビリビリと痺れた足に身悶えていた。

足の感覚はなくフランソワーズは荒く息を吐き出しながら痛みに耐えていた。

少しずつ血液が全身を駆け巡る感覚に、ゆっくりと息を吐き出していく。


(もしかして……かなり長時間、祈っていたのかしら)


意識を取り戻すのと同時に体が重たくなる。

喉が渇いてたまらないが、初めて悪魔を祓えたことで気分が高揚していた。


(ステファン殿下やオリーヴ王女殿下は無事なのかしら。一応、元凶は消えたから大丈夫だと思うけど心配だわ)


フランソワーズが倒れつつボーッとして動けないでいると、外から焦ったような声が聞こえてくる。



「フランソワーズ、フランソワーズッ! 大丈夫なのか? 返事をしてくれっ」



ステファンが必死にフランソワーズの名前を呼んでいる声が聞こえた。

返事を返そうとするが、うまく声が出ない。

そういえば自分が声をかけるまで部屋に入らないでと頼んだことを思い出していた。


(このままだと……気づいてもらえないわね)


フランソワーズはなんとか壁まで移動して、震える腕を上げてからトントンと壁を叩く。

肩で荒く息を吐き出しながらもアピールしていた。


(水を、飲まないと……)


ここまで長時間、祈り続けたのは久しぶりだった。

しかし疲れからか眠気が襲う。

このまま眠ってしまいそうだと思っていると、扉から光が漏れる。



「──フランソワーズッ!」



爽やかなシトラスの香りが鼻を掠めた。

体が持ち上げられる感覚がしたが、返事ができずにそのままされるがままだ。

艶やかな黒髪と透き通る水のような青い瞳。

どうやらフランソワーズを助けてくれたのはステファンのようだ。


(ステファン殿下が気づいてくださったのね)


フランソワーズはカサついた唇を開く。

水が欲しいことを訴えかけていたのだが、ステファンに届くだろうか。

フランソワーズの唇に耳を寄せたステファンは何が言いたいのか理解してくれたのか叫ぶように声を上げた。



「今すぐに医師を呼べっ! それとすぐに水を……!」



ステファンの言葉が遠くに聞こえていた。

彼はフランソワーズを抱えて部屋の外へ。

走っているのかフランソワーズの体が激しく揺れているような気がした。

フカフカで太陽の匂いがするベッドに寝かせられたフランソワーズに渡される水。

しかしコップを持つ手に力が入るはずもなく、医師たちがどうするのか迷っていた時だった。



「貸してくれ……!」



ステファンの声と共に水が入ったコップが傾いたのが見えた。

なんとか意識がもっていたのは、水を飲まなければ大変なことになるとわかっていたからだろう。


(…………喉が渇いた)


そう思っているとステファンの顔が眼前にまで近づいてくるのが見えた。

唇に柔らかい感触がしたのと同時に冷たい水が流れ込んでくる。

ゴクリとフランソワーズの喉が動く。



「もっ、と……」



喉が潤ったことでフランソワーズから掠れた声が出る。

ステファンに口移しで水をもらっていることはわかっていた。

恥ずかしさよりも、喉の渇きを潤したくて堪らなかったのだ。


何度か水をもらった後にフランソワーズはホッと息を吐き出した。

ステファンのゴツゴツした指が口元についた水を拭う。

彼の心配そうにこちらを見る視線に胸が熱くなる。

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