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【2025.02.15 書籍発売】追放聖女は最強の救世主〜隣国王太子からの溺愛が止まりません〜【受賞しました  作者: やきいもほくほく
一章

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宿もフランソワーズに豪華な一人部屋を用意してくれた。

外ではノアが護衛として待機してくれているらしい。

前もって準備してきた大きなリュック。

その中に入っていた非常食や武器などを使う機会はなさそうだ。

役に立ったのは着替えくらいだろうか。


ステファンは早馬を送り、フランソワーズのことを伝えたらしい。

フェーブル国王はフランソワーズが受けた仕打ちに心底驚いていたそうだ。

それからフランソワーズを丁重に扱って欲しいと手紙に書いてあったそうだ。


あとはフランソワーズの指示通りに、誰も呪いを受けることなく、常に光が当たる場所に本を移動させることができたようだ。

そうしただけで、最近は病に苦しめられていたオリーヴの病状が少しだけ安定したらしい。


オリーヴには長年愛し合っていた婚約者がいて、その令息と結婚することが夢なのだそうだ。

ステファンもオリーヴの長年の夢を叶えてあげたいと思っていると語った。


(ステファン殿下は、婚約者はいないのよね?)


フランソワーズはステファンに婚約者がいない理由が気になってしまう。

こんなにも素晴らしい大国の王太子だ。

実際、シュバリタイア王国の令嬢たちの間でもステファンは大人気だ。

好奇心のままステファンに問いかけた。



「ステファン殿下には婚約者はいないのですか?」


「残念ながら僕には婚約者はいたことがないんだ」



こんなにできた王太子はどこの国を探してもいないだろう。

ステファンが眉を寄せて荒く息を吐き出したのを見て、フランソワーズは祈りを捧げるように目を閉じる。

するとステファンは体が楽になったのかホッと息を吐き出した。

フランソワーズはステファンが遠慮しているのかもしれないと声をかける。



「ステファン殿下、わたくしの前では我慢しなくて大丈夫ですから」


「……!」


「すぐに対応できますので」



ステファンの目が大きく見開かれている。

その後、ステファンは額に手のひらに当てる。

ほんのりと頬が赤くなっているような気がした。



「そんな嬉しいことを言われたのは初めてだよ」



彼が照れている姿を見て、つられるようにしてフランソワーズの顔も赤くなってしまう。

互いに見つめ合った後に、そっと視線を逸らす。

誤魔化すように咳払いをしたステファンは、手首から見える黒いアザを撫でた。



「もしかしてその体のせいですか?」


「ああ……これが体に現れた時から、破壊衝動が抑えられなくなっていった」


「……!」



フランソワーズは、ステファンが苦しんでいた時のことを思い出していた。

あの状態になると教会で時間を過ごすか、何かを破壊し尽くすまで止まれないそうだ。



「今まではひたすら鍛錬をすることで気を紛らわせているが……自分が自分でなくなってしまう感覚は恐ろしいよ」



淡々と語ってはいるがステファンの手には力が篭っているのがわかった。

黒いアザが這う肌には爪が食い込んでいく。

彼の腰にある剣の柄はボロボロで手のひらには強く握られた跡がある。


(もしかして……ステファン殿下の体を乗っ取ろうとしているのかしら)


自分が自分でなくなる……そんな耐え難い恐怖とステファンは戦ってきたのだろうか。

それにステファンに武功が多い理由がわかった気がした。

彼は自分の心を強く保つために鍛錬を繰り返して、破壊衝動は国を守るために力を振るっているのだ。


そこでフランソワーズは想像もしない、ステファンの苦しみが垣間見た気がした。

それと同時に彼の強さを知ったのだ。

その時、フランソワーズはステファンを心から救いたいと強く思った。


(わたくしは、ステファン殿下のために何ができるかしら……)


暗い空気を掻き消すように、ステファンは別の話題を振った。



「この話はここまでにしよう。それよりもフランソワーズのことをもっと教えてくれないか?」 


「わたくしのことですか?」


「そうだな。まずは好きな食べ物から教えてほしい」


「ふふっ、わかりました」



そんな他愛のない話をしながら、フランソワーズはシュバリタリア王国の国境を越えたのだった。


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