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バグが多発しています。

 部長がログアウトされると、私達は自由行動となる。


 ホームと呼ばれる場所が部室となり、キャラクター個別ページが更衣室。


 ログイン中は、基本この二ヶ所しか行き来できないが、そうでない場合は、校庭に行こうが食堂に行こうが問題がない。


 私は、屋上で風にあたっていた。

少し長めの前髪がさらさらと揺れる。



「あ! ここにいたんだ、ゆま!」



 後ろから声をかけられ、私は振り返った。


 そこには、腰まである茶髪を持った、のっぺらぼうがいる。



「あやな、どうしたの?」


「部長に会ったって聞いたから、どんな様子だったかな~って思って」



 あやなは、パタパタと駆け寄ってきて、私の目の前で盛大に転ぶ。



「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」


「えへへ~、ごめんごめん」


「そのバグなんとかならないのかな?」


「本当だよね~、もう二年も放置で悲しいよ」



 のっぺらぼうのあやなは、表情こそ分からないが、困ったように言う。


 こののっぺらぼうは、技術的問題、いわゆるバグでこうなっているのだ。



「でもこのおかげで、どじっこ属性に磨きがかかって引き立ってる、ということで!」


あやな持ち前の明るさで切り返す。


「こんなんだから、怖がられて部長、私の更衣室にもこないからさ、部長の話聞かせてよ!」



 あやなは、食い入るように起き上がり言った。



「そう言われても、私もログボ担当なだけでよく見てないからなぁ」


「そっか~、でも、見てもらえるだけいいじゃん!」


「あやなも、バグが直ればきっと……」



 私が言い終わるより先に、あやなは左右に頭を振る。それにならって茶髪が揺れた。



「たぶん、直らないよ、直さない」


「どうして、そんなこと言うの?」



 だって、と、あやなは何かを言おうとしたが止まった。


 しばし考える仕草をしたが、声を発する。



「これで私が定着してるから、今更、目とか口とかできたら、皆それはそれでクレーム来そうじゃない?

もう、のっぺらぼうがトレードマークになってるし」


えへへ、とあやなは寂しそうに笑って更に続ける。


「それにさ、最近あちこちでバグがおきてるから、私よりそっちに力を入れなきゃ、上は」



 そう言って、あやなは天を仰いだ。


 上、というのは、運営やゲームの製作者等を指している。


 私は、ハッとした。



「そうだ、上に連絡しようよ!」



 私の言葉に、あやなは首をかしげる。



「運営に問い合わせをするんだよ!

今日はもう夜だから、明日の問い合わせ可能時間にお問い合わせフォームに連絡しよう!」



 おぉ!、と、あやなも私の意見に同意した。



「あやなのバグの件と……そういえば、最近、各学校の討伐部の部長が来てくれないみたいだから、どうすれば戻ってくるか、案を出してみたりとか?」


「いいねいいね! じゃぁ、明日問い合わせる前までに考えてくるね!」



 討伐部の全員が、部長に会えずに暗くなっていたが、私とあやなは小さな光を見つけたかのように喜んだ。


 屋上には、強めの風が吹き抜けていたが、私の心は弾んでいた。




 部長なら、どんな案がありますか?


 私なら、まず、新しいイベントをしたら良いと思います。


 ここ一年間は、ずっと復刻イベントと銘打って、過去に開催したイベントをやってばかり。


 10年もの月日が流れたら、それはやむを得ないかもしれませんが、一年間もずっと昔をリピートされたら、わくわくしないと思うんです。


 他には、何かとコラボするとか……でも、これはコラボ先とのあれこれがあるので、難しいですかね。


 あと、CMをするとか!

 新規部長の獲得もさることながら、そういえばこんな世界もあったなぁ、と部長が思い出して戻ってくると思いませんか?


 これも製作費用とかで今すぐには難しいのかな。


 新部員追加、とかも部員にも部長にも良い刺激になるかもしれませんよね。


 考えれば考える程、たくさんの案が出てきます。


 これを明日、お問い合わせフォームに書くためにまとめなければいけませんね。


 こうしてはいられません。


 私、とってもワクワクしてきました。


 にっこりと笑い、私は踵を返し、更衣室へと向かうのでした。

○コンテストで出した原文は、アルファポリスにて

○加筆して今の形になったのは、カクヨムにて

先読みすることができます。


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