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track.95 真実への帰還

 ついにその姿を現した、太陽の神にして日本神話の最高神アマテラス。

 僕らの良く知る外見をしたあまりにも偉大な存在に、僕も霧島も言葉を失ってしまう。

 どうやら、矢須は最初から気付いていたようだ。だから、毘奈にあんな荒唐無稽な約束をさせて……。



 「毘奈が……アマテラス……神様なのか……?」

 「そうなのね……天城さん。九尾の狐はあなたから日ノ本を明け渡させようと……」



 小さな頃から知ってる幼馴染のことを、誰が日本神話の最高神だなんて思うもんか。

 僕はその光景を目の当たりにしながらも、それが事実だとはすぐに信じられなかった。



 「お目にかかれて光栄よ♪ 美しき女神様♪♪ でも、全てはあなたが……天城 毘奈が望んだ事よ♪♪♪」

 「異国の(あやかし)よ、よくも純粋な少女の心を弄んでくれましたね。もうあなたの思い通りにはさせません」



 毘奈がアマテラスに姿を変えて尚、矢須は全く動じる様子はない。

 むしろ、この状況を楽しんでいるって感じだ。本当に底の知れない奴だよ。



 「残念だけど、もうあなたとあたしの契約は成就してしまったわ。これから壮大な令和の国譲りが始まるの♪♪♪」

 「そんなもの……私、アマテラスの名において却下します」



 毘奈……元い、アマテラスは矢須のサイコな発言を、あっさり切り捨てる。

 それを聞いた矢須は、やはり天真爛漫な笑顔で反論する。



 「ふーん♪ 日ノ本で一番偉い神様のあなたが、理由も無しに一方的に契約を破っちゃうんだ♪♪」

 「……理由ならあります。天城 毘奈は戸籍上未成年です。この国の法律では、保護者の同意のない未成年者の契約は、取り消すことができるのですよ」

 「何それ? ずるい、ずるーい♪♪♪」



 アマテラスのウィットに富んだ反論に、矢須は小さな子のように頬を膨らませて駄々をこね出す。



 「だから、あなたの企みもここまでです。ちょっと悪ふざけが過ぎましたね、狐さん?」



 アマテラスは駄々っ子のような矢須を見据えながら、クールに微笑してみせた。

 さすが、日本神話最高の神様。あのサイコパスな矢須こと九尾の狐を前にして、まあ余裕だった。

 すると、アマテラスは振返り、僕に対して優し気な眼差しを向けた。



 「毘……奈?」

 「しっかりするのです。あなたは高天原(たかまがはら)一の戦士の因子を受け継ぐ者。あのような狐の(あやかし)に後れを取っている場合ではありませんよ」

 「え……あ……!?」



 アマテラスが腰を下ろして僕の背中に触れると、彼女から発せられる温かな光と共に体中の痛みが癒えていった。

 僕は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして起き上がり、優しく微笑む彼女の顔を見上げる。


 

 「あ……ありがとう……ございます」

 「遥かな昔、荒くれ者のあなたにはずいぶんと困らせられました。でも、今は静かで心優しい少年に宿ったのですね……」

 「え……あ、荒くれ者??」



 まずいな。さっきから、この神様が何を言ってるのかさっぱり分からないぞ。

 日本最高の神様ともなると、やっぱり常人には理解できないものなのだろうか?

 そんな僕の戸惑いを、彼女は楽しむかのように話を続ける。



 「もう大丈夫です。私に全て任せて下さい」

 「でも、霧島が……!?」



 そうだ、僕はアマテラスに助けて貰ったが、霧島は未だに傷ついて矢須の傍で倒れている。

 矢須がどう出て来るかは分からないけど、こんなチート過ぎる強敵を前にして、霧島を人質に取られるかもしれない。

 それに気付いたのか、霧島は苦痛に顔を歪ませながら声を上げた。



 「私の事は気にしないで!! 早く……早くこの狐を倒して!!!」

 「霧島!!?」

 「ふふ……まさか、本気で言ってるんですか?」



 アマテラスは、少し毘奈の面影を感じさせるようにお道化ながら微笑してみせる。



 「この私が、(あやかし)からあんな少女一人助けられないとでも……?」

 「……え?」



 次の瞬間、矢須の足元にいたはずの霧島を、アマテラスはお姫様抱っこしていた。

 何が起こったのか、全く理解できない。とにかく、この人……否、神様は僕らの理解の範疇を超えている。

 で、一番驚いているのは霧島だろう。霧島は愕然としながら、涼し気なアマテラスの顔を見上げた。



 「あ……まぎ……さんなの?」

 「ええ、天城 毘奈は私で、私は天城 毘奈……。会いたかったですよ。妹の因子を受け継ぐあなたにも」

 「体の……痛みが、消えていく……?」



 アマテラスの腕の中で傷を癒され、霧島はまだ夢冷めやらぬ顔で地面に立つ。

 霧島が、妹の因子を受け継いでるとか何とか聞こえたな。

 そうか、霧島が変身する大口真神は、確かツクヨミの化身だとか言ってたっけ?

 僕の中で、少しだけ点と点が線で繋がった気がした。


 

 そして、いい加減蚊帳の外にされ続けた矢須は、またもや駄々っ子のように地団駄を踏んだ。

 


 「フンだフンだ♪♪ いくらあなたが太陽の神様だからって、この幻想空間であたしに勝てるかしら?」

 「そうですね。ここはあなたが理を支配する世界。さすがの私でも、少し分が悪いかもしれません……」



 と、先程から強気だったアマテラスは、弱気な事を口走る。

 ところが、せせら笑いをする矢須を尻目に、アマテラスは飄々(ひょうひょう)と持っていた八咫鏡を掲げてみせた。



 「あくまでも、ここだったらの話ですが……。どうやら、この鏡の力をご存じないようですね?」



 すると、アマテラスの掲げた八咫鏡が眩く輝き始め、周囲の風景がどんどん歪みだしたんだ。

 


 「真実を暴き出す我が鏡よ、(あやかし)が作り出し幻想世界より、我らと共に真実へと帰還せん!」

 「なんだ!? 何が起こってるんだ!!?」



 そして、アマテラスが呪文のようなものを詠唱すると、今までそこにあった風景がガラスのように飛散し、空からは眩し過ぎるくらいの太陽が僕らを照らした。



 「ここは……現実世界!? 毘奈……アマテラスは!!?」



 一瞬見慣れない場所かと思ったけど、どうやら僕と霧島は病院の屋上にいるらしい。

 あの世界へ行く前は、あんなにどんよりと曇っていたのに、雲一つない快晴であった。

 それにしても、当のアマテラスと矢須の姿が見えない。僕らは必死に周囲を伺う。



 「那木君! 上よ!!」



 霧島は空へ向かって指を差し、僕は手で日差しを遮りながら天を仰いだ。

 


 「さすがね♪ まさかあの世界ごと壊しちゃうとか、恐れいったわ♪♪♪」



 この状況になっても未だに飄々としている九尾の狐は、九本の尻尾を別々の生き物のように揺らしながら空中で静止していた。

 そして、八咫鏡を携えたアマテラスが、それに向かい合う様にして空に鎮座していたんだ。



 「さあ、覚悟はできましたか、悪戯好きの狐さん?」


 

 日本神話の最高神と、伝説の厄災との最後の戦いの幕が、今切って落とされようとしていた。

お読みいただき、ありがとうございます。


前回は、まさかのブックマーク減少ぉぉぉーーー!!!

そ……そんな、馬鹿なぁぁぁーーー!!

でも、いいねありがとうございます!!


毎回毎回図々しいお願いで大変恐縮ですが、ブックマーク・高評価・ご感想等を賜りますれば、ただただ感謝感激でございます。

どうか今後とも、本作品への温かなご支援の程、伏して伏して__|\○_ __|\○_よろしくお願い申し上げますm(_ _)m


次回、第五章ついに完結です!!

アマテラスと九尾の狐の戦いの行方やいかに!?

次回更新は7/28予定となります。

ご期待ください!

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