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2話―― 雑用係。追放される。その2


 声を荒げ、たまらず殴りかかるようにラルグの襟元を掴み上げれば、ラルグの冷淡とも取れる視線がぶつかり合った。


 俺のことはいくら貶めたって構わない。


 冒険者として未熟なのもわかっているし、冒険者として大成するだなんてできもしない『夢』に未だにしがみついている俺は、たしかに周りから見たら無様に映るだろう。


 所詮は結果が全て、俺の実力不足については甘んじて受け入れる。

 ただな――、


「取り消せよラルグ。その言葉はいままでお前を支え続けてきた受付嬢のみんなや用務員を馬鹿にしてると同じ発言だぞ! 必死にギルドを盛りたてようとしているあの人たちに感謝の気持ちはねぇのかよッ!!」


「はっ、碌な固有スキルも使えずギルドに貢献できねぇような奴になに言ったって問題ないだろうが。それとも自分だけはギルドに貢献できるとでも言いたかったのか?」


「そういうことを言いたいんじゃねぇ! 彼女らに払う敬意ってもうはねぇのかって言ってんだよ!!」


 『固有スキル至上主義』に踊らされたクソ野郎が。

 下にいる奴を歯車としかめてねぇお前にギルドマスターを名乗る資格はねぇ!!


「ほーう、そこまで言うか。それじゃあ聞くが俺がクソ野郎ならそれじゃあテメェは一体なんだ? このギルドがここまで成長するまで肝心のテメェはいったいなにしていたか言ってみろよ」


 なんだと?


「俺達が汗水たらしてダンジョンで成果上げてる間やってた仕事は? 一度でもダンジョンで活躍したか? そこまで言うんだったらさぞ素晴らしい結果を残したんだよな? ええどうなんだ?」


「それは――」


「ふっ――、そーだよなぁ答えられるはずがねぇよな。なにせテメェは一度としてこのギルドに胸を張って貢献できることは何もやって無かったもんな? だろ? 役立たずの自己管理野郎」


 いたぶるような笑みを浮かべ、ラルグの顔面を本気で殴りたくなってきた。


「それにテメェがしがみついてる仕事だってギルドに納品された素材の管理だったり、仕事の案内や依頼の斡旋だ。無能のお前ができるってことは、そりゃ言いかえれば誰にもできる仕事だよな? 受付嬢にだってできる仕事だ。――違うか?」


「――ッ。それは、確かにその通りかもしれないが……でもここの管理は俺の仕事だ。俺がいなくなったらこの素材管理室はどうする!」


「そんなもん外部に依頼すりゃいい話だろ。俺達はもうS級ギルドなんだ。テメェ以上に薬草や素材に詳しい専門家なんざ腐るほどいる。自分を管理するしか能がねぇテメェはもう必要ねェんだよ」


 ラルグの言葉はある意味正しい。

 確かに俺の『固有スキル』は特殊過ぎてダンジョン探索の役には立てない。

 俺なんかより有用な『固有スキル』を持った奴はたくさんいるだろう。

 だが――


「……いいのかよそんなこといって。彼女たちだってダンジョンに潜り続けてきた専門家ってわけじゃないんだ。素材の管理はできても相性の良しあしは絶対に判別できないぞ。

 それに、お前らが今までギルドに預けてる素材や武器の数々をいったい誰が管理してると思ってんだ!!」


「――ちっ、うっぜぇなおい。あと敬語はどうしたよおい、まさかギルドマスターである『俺さま』に逆らう気か?」


「――うがっ!?」


 身体に重い一撃が加わり思わず腹を押さえて、後ずさりする。

 肋骨が軋みを上げる。内臓が破裂したかと思った。


「ったくこれだから雑用は自分の立場を理解しねぇでつけあがるからいけねぇ」


 へらへらと冗談めいた様子で手を振ってみせるギルドマスター。いや――ラルグ。

 その口調が完全に昔のものに戻っていた。

 同い年なくせに上昇志向で傲慢な性格だったが、完全に俺のこと雑魚だと舐め切っているようだ。


 一発、二発と重い衝撃が脳を揺らし、視界が明滅する。


 本当なら一発殴り返してやりたいのだが、悲しきかな『冒険者』時代の下積みのあるラルグと俺とでは身体能力に違いがあり過ぎた。

 俺が拳を振り上げようと、この男は難なく受け止めてみせるだろう。


 そのくらい人間としての強度レベル差があるのだ。

 でも――これだけは譲れない。


(せめて一発。あいつの顔面に叩き込む)


 俺は俺なりにこの十年間。このギルドで誇りを持ってやってきた仕事なのだ。

 黙ったまま終われない。

 だけど――


その3に続きます。ようやく反撃の時!!



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