本人たちが幸せならそれでいい
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水樹から結婚のプロポーズされてから二週間後には両家の顔合わせ(と言ってもお互い高校時代からの付き合いなので軽い会食的な感じだったのだが)をちょっとした高級料亭でして、あとは結婚式のの日取りやプランなどを色々と考えるだけとなった。
しかしながらそれだけと言えども一生に一度の晴れ舞台であり、当然そこに金銭面での妥協はあれどそれ以外での妥協という文字は無かった。
日取り一つとっても未だに悩んでいる程である。
そんな私に両親は「そんなもの過ぎてしまえばただの思い出だから日取りなんてささっと決めちゃいなさいな」「うん。 母さんの言う通りだとお父さんは思うな」「だけ良い思い出だけ残ればどうとでもなるわよ」「うん。 母さんの言う通りだとお父さんは思うな」「何なら来月とか良いんじゃないの? 六月だし」「うん。 母さんの言う通りだとお父さんは思うな」と宣うので「それ以上しつこいようだと孫が生まれても向こう三年はみせてやらないから」と言うとぴたりと静かになった。
まぁ、どうせ一日でも早く娘の晴れ姿を見たいのだと思うので黙っているのならばそれで良い。
一度「早くしないと水樹君に逃げられちゃうかも。 心変わりする前にどうにか……」と言いかけたので睨みつけるとそこから先は黙ってくれたので聞かなかった事にする。
因みに妹は妹で「いつでも浮気しても良いからねっ!! なんなら乗り換えてもいいわよっ!!」とかほざいているので「冗談でも言っていい事と駄目な事があるだろう」と割とガチ目に焼を入れたのでもう大丈夫だろう。
しかしながら、振り返ってみるとなかなか酷い家族であると思わざるを得ない。
「美奈子もなかなか──」
「何かしら? 何か面白い冗談を言おうとしているように思えるのだけれども、それが笑えない冗談なら覚悟しておく事ね」
「すまん、何でもなかったわ。 俺の気のせいだった」
「よろしい」
そんなこんなで、なんやかんやありながら式の日取りや内容も順調に決めて行く。
水樹と一緒にあれでもないこれでもないと選ぶこの時間もまた『あ、私達結婚するんだ』という漠然とした感覚からリアルな感覚となり、とても幸せな時間であった。
そして会社では結婚するという事で結婚式がある月を最後に退社する旨を伝えたのだが、私達よりも二か月早く善子先輩が寿退社する事が決まったのだから驚きである。
因みに善子先輩曰く、襲った日に丁度当たったとの事で計画性があるのか無いのかよく分からないのだが、善子先輩からすれば計画通りなのだろう、と思う
それでも本人たちが幸せならそれでいいのだろう。