最高に幸せそうだった6
そう言いながら私をやさしく抱き締め、頭を撫でてくれる。
それと共に水樹が私の側にいるんだと、抱きしめられる事で伝わってくる水樹の対応と共に強く思う。
「それじゃぁ、俺の、俺だけのお姫様。 この指輪を付けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
そして、私が泣き止むまで抱きしめながら背中を刺すって頭を撫でてくれた水樹が、私が落ち着き始めると指輪を手に取り、付けて良いかと聞いてくる。
そんなの、聞かれなくても私の答えは決まっている。
「お、お願いします」
素直にそう言うのは、あれ程泣いてしまった手前少しだけ恥ずかしいのだが、水樹は私が恥ずかしがらないように、あえてあんな芝居がかった感じで聞いてきたのだろうという事が伺えるし、あの芝居がかった問いかけだからこそ、私の少しばかりの恥ずかしさなど何でもないような気がしてくる。
そして、そのことがまた嬉しくてたまらない。
やっぱり、私は水樹が大好きで、他の誰にも渡したくないと強く思えてくる。
先程では、私よりも水樹に似合う女性はいるのだからと諦めかけていたのに、水樹からプロポーズされた今となっては『はっ倒してやるからどっからでもかかってこい!!』状態である。
そんな私を、自分自身で現金な女だなと思う。
でも、やっぱり水樹だけは何があっても譲れないし譲りたくないと改めて強く思ったのだから仕方がないではないか。
そして私は、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった感情で水樹に左手を差し出す。
すると水樹は、まるで壊物を扱うように私の左手を優しく左手で支えると、右手に持っていた婚約指輪を愛おしそうに付けてくれる。
いつ測ったのか婚約指輪は私の指のサイズにぴったりだった。
その、婚約指輪が付いた左手を見ると、じわじわと『私は水樹のものになっただ。 そして水樹は私のものになるんだ。 と、いうか私達結婚するんだ』ということがじわじわと実感として湧いてくる。
そして、左手薬指に付けられた婚約指輪を、何時間でも見続けてられる気がしてくる。
左手薬指の婚約指輪を見つめるだけで私は何回でも幸せ絶頂になれる気もしてくる。
今まさにこの時が、高校時代よりも、大学時代よりも、何よりも一番幸せで、一番水樹の事を心の底から愛していると言い切れる。
そして私は水樹へと向き、右手を差し出す。
「うん? どうした?」
「あるんでしょう? 水樹の分も。 今度は私が水樹の左手薬指に婚約指輪を付けてあげる」
「じゃぁ、お願いしようかな」
そう返す水樹の顔も、最高に幸せそうだった。