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この一瞬だけは呼ぶことにする

「ふぅ……簡単に言ってくれちゃって」


そして私は何も知らない眞子の、何も考えていないであろう発言にやれやれというジェスチャーと共に溜息を吐く。


「そんな簡単な問題であるのならば初めから眞子を呼んで作戦会議などする訳が無いじゃない。いくら何でも頭が固すぎてよ眞子さん。もう少し頭を使いなさいよ、頭を」

「ふーん?じゃあ頭が固すぎて岩をも砕ける私は戦力外の様なので本日は帰宅させて頂きます」

「嘘っ!嘘だからっ!!ちょっとしたジョークじゃないのさっ!?見捨てないでっ!眞子だけが頼りなのっ!」

「プリン」

「プ、プリンね。おーけーおーけー」


コンビニのプリンで良いだろう。


安い女である。


「駅地下で売ってるセルニーニョの焼きプリン」


こ、コイツここぞとばかりに高級洋菓子を要求して来やがるだとっ!!図々しいにも程が────


「返事が無いようなので私はここいらで帰らせて────」

「買いますっ!!買わせて頂きますっ!!」


ぐぬぬぬぬっ!!近い将来絶対に眞子の奢りでセルニーニョの焼きプリンを食べてやる!!


と心に深く刻みつけつつもまるで大黒天が如く笑顔を張り付け手を蠅の様に揉みまくる。


私が生き残る為だ。


プライドなどとうに捨てた。


「てか前の話を聞く限り化粧をしたミーナはミーナってバレてないのならばまた化粧をすればいいんじゃないんですかね?」

「平日の昼間は我が母上は仕事、妹は部活でござるよ。自慢ではないが誰も化粧ができる人物が我が家には当日おりませぬ」

「ミーナも腐っても女性なんだからそろそろ化粧の一つや二つくらい覚えたらどうなのよ。社会に出たら身だしなみって学生が思っている以上に重要だから今から覚えておくくらいの方が良いわよ」

「あんたの中身は何歳なのよ。てか私のお母さんみたいな事言わないでよ」


ホント、女子高生の皮を被ったアラサーOL女性なんじゃなかろうか?と偶に本気で思ってしまう様な発言をするのでもう心の中で眞子の事はおばさんと呼んであげた方が良いのかもしれない。


「い、良いじゃない別にっ!知っていて損はないでしょっ!!今は私の事よりもあんたの事でしょうがっ!全く、分かったわよ。当日私も一緒に行ってあげるから高城にミーナの友達を連れて来る事の許可取りなさい。私が当日化粧をしてあげるから。それと間違っても眞子である事は言わないでよ?」

「眞子様ぁぁああああっ!!」

「あぁ、もう分ったから鼻水ながしながら抱きついて来ないでよ汚いわねっ!!」


そして私は心の中で眞子の事を救世主様と、この一瞬だけは呼ぶことにするのであった。

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