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海いけるって

「わ、分かった。無理言ってごめんねっ!」


そして何でもない風なのを装っている石田小百合であるのだがその声の節々から心が傷ついているのを悟られない様に必死に我慢している事が伺えて来る。


「取り敢えず、今聞けるかもしれないから電話してみるわ」

「う、うん。お願いっ!」


なんと健気で良い娘なんだろうか?思わず駆け寄って抱きしめたくなるのだが、石田小百合はリア充グループの女性支部トップに君臨するお方である。


ヒエラルキー最底辺の私がそんな事をしてしまえばどうなるか、想像する事等容易である。


海の藻屑コースか山の養分コースという二択が待っているだけである事ぐらい簡単に想像がつく。


そんな事を考えているとスカートのポケットに入れていたスマホが『ブブブブブブブ、ブブブブブブブ、ブブブブブブブ、』とビートを刻み始めるではないか。


嫌な予感しかしない。


「どこ行くの?ミーコ。顔色悪いけど保健室なら付き合おうか?」

「だ、大丈夫っ!!何ならいまからフルマラソンに参加できるくらいには元気いっぱい健康そのものだからっ!!ちょっと特大なあれが爆発寸前なだけだからっ!!」

「………漏らす前にイットイレ」


そして私は眞子に特大うんこが産まれる寸前の乙女であると勘違いされながら急いで人気のないトイレへと駆け込む。


あと眞子、小学生ならばまだしも高校生にもなって流石にそのギャグは例え一周回っても無いと思う。


そして今だに無音でビートを刻み続けているスマホを取り出して画面を確認すると予想通り『高城グラン』と表示されていた。


『出るの遅いぞ』

「私のスマホに直接電話かけてくるなんて何考えてんのよっ!!?」

『いやだってお前俺の妻じゃん』

「ゲーム内の話でしょうがっ!!ゲーム内のぉぉおおっ!!」

『あぁもう煩いなぁ。発情期の猫かよ』

「あんたのせいでしょぉぉぉうっ!!?あとで絶対に殴るっ!!」

『はいはい。それは置いといて本題なんだけどクラスメイトから夏休み海に誘われてるんだけどさ』

「知ってるわよっ!!私高城君と同じクラスですからねぇっ!?」

『それは説明が省けて良かった。それで海、行っても良いかな?』

「勝手に行けば良いでしょっ!?なんで私の許可がいちいち必要なんですかねっ!?」

『了解ー。石田ーっ、海いけるってーっ。じゃあ日にちと集合時間が決まったらまた連絡するから』

「え?ちょっと待てっ!?え?私も行く系の流れだよねっ!?その感じだとっ!?気のせいだよねっ!?」

『じゃ、そういう事だから。じゃあねー。愛してるよー』

「そういう事ってどう事よぉぉおおおおっ!!御託は良いから教えなさいよぉぉおおっ!!!」


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