無情なブルー
目が覚めた時には、父はたいそう怒り狂っていた。
ダフネには、冷静沈着な父を、あくまで見せていたが、怒鳴り声が屋敷中に響いていたから、あまり意味があったようには思えない。
ダフネは、その怒鳴り声から、自分の婚約が破棄されたのだと知った。
「ダフネ、私は、学園で社交を学べと言っただろう。」
「ええ、お父様。」
「それは、あの程度の女は御せという意味で言ったんだが。」
「申し訳ございません、お父様。」
もう、いい。父はため息交じりにそう言うと、小さく咳ばらいをした。言いにくいことをいうときの父の癖だ。社交を学べと言った時も、同じように咳ばらいをしていた。
「婚約は破棄された。」
「そうですの。」
「あちらは、責を感じて、とのことだが、破棄された娘側のことは考えないらしい。」
「他の血縁の方をご紹介いただけるわけではないのですか?」
唯一の希望を口にしたが、父は渋い顔を隠さなかった。
「どうしたい。しばらくは、修道院に行くこともできる。お前の傷がいえ、社交界での傷も忘れられたころに戻ればいい。」
「……そうですわね。それも、良いかもしれないわ。」
「寄付は十分にする。今と変わらぬ生活を送れるように、レオノルもつけよう。十分に休みなさい。」
父は、ダフネの頭を一瞬なでた。そのことに、ダフネは驚いてしまったが、父の手の重さにもダフネは驚いた。
その時、もしダフネが家にいたいと言ったら、どうなっていたのだろうか。ダフネは、父の傍にいられたのだろうか。
一番近くて、とても遠い場所に。