表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/37

てのひらのブルー

「なんの、御冗談ですの。」

「冗談ではありません。このような訪問になってしまったこと、申し訳ないのですが、ともに来てください。事情は馬車で説明いたします。あなたへの宰相閣下のお手紙も預かっております。」

「……お嬢様、」

「ここも安全ではなくなる。早く、」

「この方は、信用に値しません。宰相閣下にお手紙を書き、お返事を待つべきです。」


 本来であれば、レオノルの言葉を実行に移すべきだったが、時は急を要するという彼の様子がまるっきり嘘にも思えなかった。


「私が信用に値しないことは、重々わかっています。お叱りはあとでいくらでも。ですが、今は、アンブロース嬢の命が最優先だ。」

「宰相閣下が、もしお亡くなりになったとして、手紙をこの方に託すはずがありませんわ。」

「アンブロース嬢!」

「……手紙をお見せくださいますか。父の筆跡であったのなら、いったんは、あなたを信用して、ついていきましょう。あなたが、私を屠る理由も、あまりないように思えますし。」

「お手紙をお見せします。それと、一つだけ。」


 そういうと、彼は地に片足をつき、突然、ダフネの手を取った。


「私は、命に代えても、ダフネ・アンブロース嬢をお守りします。」


 唇が掌に触れる。その意味を、ダフネは知らない。

 レオノルがダフネの手から、アウグストの手を払いのけた。


「その言葉ほど軽い誓いの言葉を、私、聞いたことはございません。」


 レオノルの言葉に反証することもなく、アウグストは手紙を取り出した。確かに、父の筆跡だった。

 流麗で繊細な筆跡だったが、たいがいその手は、ダフネに無情だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ