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ベニスの喜劇のブルー

 シーロ・タルラゴ


 父の手紙に書かれていた注意すべき人物の名前を、ダフネは調べることにした。ほかにも幾人か警戒すべき名前が書かれていたが、その中でダフネが知らない人物は、シーロ・タルラゴ一人だったからだ。


「商人。スパイスと鉄、武器の取引を主に行っている。妻は一人。妻の実家も同じく商家。主な取引先は商家と、あとは、低位の貴族。」

「どこにでもいる商人のように思いますが。」


 レオノルは、読み上げられた情報に首をかしげる。


「……そうね。シーロ・タルラゴ、どうしてお父様は警戒するように言ったのかしら。我が家との取引もないわ。」

「スパイス、のほかに薬草なんかも扱っているようですが……。特にこれといってありませんね。」

「血縁関係は?」

「すべてを調べられたわけではありませんが、貴族の血筋と縁ある様子もありません。」

「そう……」


 アウグストはこの人物を知っているだろうか。戦場から手紙が届くでもない間柄の男を想像してから、わずかに首を振る。


「メーナ家との取引は?」

「……メーナとは、なさそうですね。目立った家とは特に。」

「ウレタ家は?」

「ウレタともありません。」


 自分の口をついて出たウレタという音に、ダフネは不快になった。2年もの間、神に祈り続けていたというのに、こんなことでダフネは心を乱される。

 それは、きっと、アウグストとゲームをしてからだ。

 父は、感情を操れと言った。でも、ダフネは感情に操られているのかもしれない。それは、ダフネを弱くする。

 とても、恐ろしいことのように思えた。


「引き続き、調べさせて。」

「かしこまりました。彼女はどうしましょう?」


 ダフネは、ふと切ない顔をしたエドゥアルダを思い出した。


「必要ないわ。」


 その表情の意味が、ダフネにはわからなかった。でも、調べたところで、知りたくない事実を突きつけられるだけな気がした。

 知らずに済むことは知りたくない。

 それが、ゲームに影響するならば、なおさらに。





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