祈りのブルー
ダフネ・アンブロースは、修道院でただ祈りをささげていた。
修道女は皆、黒か灰色の服を身にまとっていたが、ダフネは白いワンピースを身に着けていた。
白よりは生成りに近いそれは、修道女の中でも異質だったが、その修道院にいるどの御令嬢方とも違った。
寄付をしている貴族の娘たちは、常と変わらない生活を修道院で送っているものだったが、ダフネは違った。
父が十分なお金を寄付してくれているにもかかわらず、どちらかと言えば修道女に寄った生活を送っていた。
「アンブロース嬢」
男子禁制の修道院では、修道女たちがすべての運営をしている。シスター・テレはその中では年若い女性だ。
侍女としてついてきてくれているレオノル・ピンソラスが、振り向く。
「お嬢様は、今、お祈りをされています。私が、代わりに伺います。」
「お邪魔をしてしまい、申し訳ございません。アンブロース嬢は、本当に熱心に祈られますね。」
修道女として清く正しく生きている彼女が、ほかのご令嬢に良い気持ちでいないことは知っていた。
しかし、寛容に生きるべきだという教えのために、それを公にすることはない。
「お嬢様は、昔からそうですわ。それで、御用件は?」
「ああ。アンブロース嬢に御面会にいらっしゃっている方がいて…。」
「まあ、どちらさまでしょう?宰相閣下でしょうか?」
「いえ、お父君ではなく、御婚約者の方が…」
そこまで聞いて、ダフネはわずかに目を開けた。跪いていた足がピクリと反応する。
アウグスト・ノエ・フォンセカ
ダフネが婚約者と聞いて想像する人は、その人、一人だけれど、その婚約は二年も前に破棄されていた。
それからすぐに、この修道院に入ったダフネに、婚約者はいない。
「どちらさまでしょうか、お嬢様には…」
「レオノル」
「お嬢様」
「お会いしましょう。」
誰だかは想像もつかなかったけれど、ダフネは立ち上がって、会うことを決めた。2年たったことで、ダフネは婚約者という言葉を聞いても、心は凪いだままだった。
だから、たとえ、そこにいる人間がだれであっても冷静でいられると思った。表面上、ダフネが取り乱したことは一度もなかったけれど。
本当に久しぶりに小説を書きました。
設定を詰めずに気の向くままに書いたリハビリ作ですが、読んでいただけたら幸いです。