紅茶とお菓子
ステア殿下は前世は私と同じ日本人。そしてブラック企業の社畜だったと言う。実は……私もそうだったのだが、今のところ連れ戻されたくはないので言わないでおく。
連れ戻すように言われて来たみたいだけど、私的にもう一度社畜というのはごめんだ。
それに、ステア殿下が転生者ということで、ゲーム同じようにバッドエンドを向かえる可能性が低くなってきた。折角なら、この世界を思う存分楽しみたいし、協力すると言えば、彼と話す会話に困らない。
もう少し様子を見てもバチは当たらないだろうしね。
「フルール嬢? 大丈夫か?」
うつ向きながら考えていた為、具合が悪いように見えたらしく、心配した顔を向けられた。
「いえ、少し考え事をしておりました。紛らわしくてすみません。あと、お茶とお菓子がまだ来ていないのが遅いと思いまして」
お茶しててと言われたのに、何も無いのはおかしい。メノちゃんどうしたのかな?何かあったんじゃ……。
「確かに、話始めてから結構経つな」
「パーティーの方の準備が忙しいからですかね。すみません、急いで持ってくるので、待っていてください」
ドアを開けると、部屋の外にステア殿下の護衛がいたので安心して部屋を出る。部屋に入った時に気づかなかったから存在感薄いなぁ。
◇◇◇
自分でお茶とお菓子をとりにいこうと思ったが、行く途中にメイドのローザを見つけたので持ってきてもらうよう頼んだ。
きっとお茶は淹れ直さないと駄目だと思い、その道のプロにお願いすることにした。
「本当はメノに持ってきてもらうようお母様がお願いしていたのだけど、見ていない?」
「すみませんお嬢様、メノは見ておりません。仕事を放棄するようなことは今までなかったので、何かトラブルがあったのかもしれません。他の使用人にも聞いて見ます。何か分かったら、お茶をお持ちする際にお伝えします」
「ありがとうローザ。あなたの淹れる紅茶とっても美味しいから楽しみにしてるわ!」
実は、ローザはメノちゃんよりも紅茶に関してはプロだからね。
「恐れ入ります」
◇◇◇
ステア殿下のいる部屋の前に立つと、私は違和感に気づく。護衛がいなくなっていたのだ。
ドアを開けると、中には殿下が居るだけで、護衛が中に入ったと言う訳ではなさそうだ。
「殿下、お茶とお菓子は他の使用人にお願いしてきました。……それより、護衛の方は何処へ行かれたのですか?」
「護衛は今日は連れてきてないけど?」
連れて……無い。じゃあ、あれは一体誰?一国の王子に護衛無しと言うのも突っ込みどころだが。