早朝の客人
「おぉー! ついに、この日が、やって来たー!」
私は勢い良く起き上がり、ベッドを脱出。
するとメノが部屋に入ってきた。
「お嬢様! 早く着替えましょう! 急がないと来てしまいます」
そんなに早く来る人いるの?まだ朝だよね?パーティーは夕方からのはずだけど。
「あっ!」
色々考えていたせいか、メノに問答無用といった感じでお姫様抱っこされて衣装部屋まで運ばれてしまった。
◇◇◇
「今回は誕生日パーティーの主役ということで、この前特注したドレスと装飾品で宜しいですか?」
一応疑問符はついているが、決定事項のようだ。されるがままにドレスを着せてもらい、化粧や髪結いも施される。
「お嬢様! 今日も更にお美しいです!」
ふと鏡をみる。黒髪ストレートに深紅の瞳。悪役令嬢らしくつり目だけれど可愛い。客観的に見るとね。ナルシストではないです、断じて。前世は平凡な顔で、こんな綺麗な感じではなかった。
「メノちゃんありがとう!」
「お褒めくださり光栄です。では、行きましょうか」
「えっ? 行くって何処へ?」
「決まってるじゃないですか? 公爵と公爵夫人の所へですよ!」
私は何故かまた例の抱っこをされた。
◇◇◇
あれ?書斎ではない部屋みたいだ。何でだろう?
「お父様、お母様、入っても宜しいですか?」
喋っているときにメノに降ろされた。
「良いわよルー」
お母様から許可がおりたので入る。
「失礼します」
ドアを開けると……金髪碧眼の少年、ステア殿下が座っていらっしゃった。朝から心臓に悪い。もしかして、婚約の話?
「こちらは王太子のステア殿下、ルーの婚約者だ」
もう、婚約は決まってるんですね。まぁポジティブに考えよう。仲良くなれば、きっと……主人公との間に大きな壁となる婚約者を断罪せずに、円満に婚約破棄することが出来る!処刑バットエンドの回避!いじめず、嫉妬せず、くっつかない!
「初めまして。ルファリエラ・フルールと申します。殿下との婚約、見に余る光栄です。わざわざ公爵領まで足をお運び下さり、有り難うございます」
「こちらこそ宜しく」
「ルー、私達は退室するから、殿下とお茶していなさい。メノ、お茶とお菓子を」
「畏まりました。只今お持ちいたします」
皆出ていってしまい、私は殿下と二人きり。
先に話しかけたのは殿下だった。
「誕生日おめでとうルファリエラ嬢。ささやかながらどうぞ。あと、ほんとは初めてじゃないよ?」
そういって私の誕生花であるキューラルの花束を手渡された。でもあまり見掛けない赤色だ。よく見るのは白色のものが多いと思う。
初めてじゃない。……どこで会ったっけ?
「失礼ですが、見に覚えがありません」
「お茶会で会ってるよ?サンフィル公爵家の時に」
あ、挨拶適当にしてたから覚えてなかった。記憶を思い出してたら覚えてただろうけど。
「そうでしたか。すみません、記憶にありませんでした。」
失礼だが、本当のことだから仕方ない。
「まぁ過去のことはいいよ。これからよろしくね」
「宜しくお願いします」
「で、さっそくだけど一つ質問いい?」
「はい」
「……非忘却人って知ってる?」
??