~国交樹立をしたいです~
海上自衛隊 訪問使節艦隊
「大丈夫かねぇー。」
外交官としていままで護衛艦を引き連れて他国への訪問などしたことが無かった。
しかもこれから行くのはおそらくかなりの大国であり、舐められないためにとはいえ、現代文明を持つ国家に対して正しい訪問か?という疑問もある。
「レーダーに反応!」
想定の範囲内での対応である。
戦闘機がスクランブルしてくることが無い方が不安である。まずは、敵対しないことが重要であり、言語の壁がある可能性が高いために図や絵でコミュニケーションをとるのである。
30分後には着くだろうか?それまでの気持ちの整理が必要だ。
外交官は死を覚悟しつつも、希望を持って準備を進めるのだった。
East所属 ノルト空軍 E-18戦闘機
パイロットであるライルは緊張感をもっていた。
これから接近するのは未知の敵対艦の可能性があり、下手をすれば撃ち落とされるかもしれない。
現代文明と思われる突如出現した国家がミサイルをもっている可能性はほぼ100%に近いと言われ、念の為空対艦ミサイルを積んで来ている。
「はぁ…」
ため息をついたその時、レーダーに反応があった。まずは攻撃意思がないことを示す。
そして念の為無線を試みる。もしかしたら使用する回線が同じ可能性もある。希望的観測に過ぎないが、相手に何らかのメッセージが伝われば、それで十分と言われている。
「こちらノルト連邦空軍所属E-18戦闘機。貴艦は我が国の領海に侵入している。本機について来て欲しい。湾岸施設まで案内する。」
果たして通じるのだろうか?
パイロットは一抹の不安にかられるのだった。
訪問使節艦隊旗艦 みょうこう CIC
ザワザワ…
ブリッジではとてつもない動揺が広がるばかりであった。どう考えても無線が入って来ている。それでもかなり驚きだが、相手は英語を喋っているのである。
とりあえず英語で返信する。
「我々は敵対意思は無い。国交樹立のために帰国の領海を侵犯してしまった。正式に謝罪をする。」
相手もまさかの同一言語であることに驚きの声をあげたが、こころよく案内を引き受けた。
相手が敵対的ではないことを確認し、外交官は1人安心するのであった。
ノルト連邦共和国 大統領府
「…ということだそうです。」
集まった政権幹部たちは一気に緊張から解放される。ひとまず相手が敵対意思はないことが分かり、しかも嬉しいことに言語が通じる。
「これはかなり安心じゃないか?上手く行けばEastに新たな加盟国の誕生だ!」
浮かれ声で大統領が言う。
さすがにそこまでのことはまだ分からないが、確かに大きな前進であった。
「よし、すぐにでも外交準備。出来れば使節団の派遣も検討したい。」
全会一致で国交樹立の準備が開始された。