~日本が現代型異世界に転移しました~
プロローグ
ーーーーーーーーーーーー
首相官邸
「どういうことだ?」
首相の言葉に対して官房長官が疑問を呈した。
「諸外国とのホットラインが切れ、衛星の反応が切れただと?我が国がサイバー攻撃の標的にでもなったのか?」
首相は落ち着き払って言った。
「いいえ、どの国からも受けていません。」
「では、なぜこのようなことになったのだ!」
なだめるような声で常識では考えられない言葉を首相は発した。
「日本の国土および周辺海域の海底が転移しました。」
は?
閣僚全員の頭に疑問符が浮かぶ。
「転移とはどこにだね?」
「1部残存したと思われる数基の日本領空の直上にあった衛星によ
れば、ユーラシア大陸のあった位置に別大陸が存在し、航空基地と思われるものも存在しています。」
会議室に動揺が広がる。
全員の頭に広がるのは飢餓や未知の病原菌の心配や、国益上、経済上のダメージが予想されること、さらには自分の保身や間近に迫る選挙戦への影響であった。
「…ひとまず状況を整理し、付近の国へのコンタクトの確認をしようと思っていますが、これから対応について検討を開始します。」
会議は難航を極め、その間も国民の不安は広がるばかりであった。
東大陸 ノルト連邦共和国 大統領府
「…つまり同レベル文明の国家が突如領海内に出現したと?」
大統領は半笑いで部活に訊く。
「衛星からの情報を元に対応を検討しています。」
「HAHAHA、そんな冗談は私には通じないよ。」
大統領は笑いだす。いつも堅物な部下が冗談を交えたのが以外で、今日から彼とも仲良く仕事できるだろうと思い、愉快だったのだが。
部下が真面目な表情を浮かべることにふと、違和感を感じる。
「どうした?笑いすぎか?」
「冗談ではありません。すぐに対応を検討してください。」
ようやく理解した大統領は顔を引きつらせる。
「マジで?」
首相官邸 小会議室
「ということで、まずはコンタクトをとると?」
最後の確認をとる。
閣僚全員が認める。
「では、会議を閉じます。」
ーーーーーーーーーーーーその後少し経っての会議室
「はぁ…」
1人残った首相はため息をついた。
「なんでこうなってしまったかな?」
48歳で首相となり、1年を改革のために捧げ、狡猾な外交をしまくった。
日本の力を取り戻した自信があった。
しかし全てが無駄となってしまった。転移というわけのわからない現象で自分の地位も危ない。
あの日この国を誇れるようにすると誓った少年はとてつもない理不尽な壁にぶつかっていた。