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第4話 熱病ー2
深夜12時を過ぎてその男は現れた。ぼうっと娘の顔を見た後、こちらを見た。ひどく疲れ切った顔だった。40代前後だろうか。眼鏡をかけ知的な雰囲気だったがその目に生気は感じられなかった。俺は噛みつくようにやつに言った。
「あんた......っ! 倒れた娘を放ってこんな時間までなにしてたんだよ!」
男はうんざりしたような視線でこちらを見て、吐き捨てた。
「ここまで娘を運んでくれたことは感謝する。だが君はこちらの生活に一切関係のない人間だ。口を出さないでいただきたい。お引き取り願おう」
──関係ない。──カンケイナイ。そうやって割り切ってきた。自分が関わると、誰かが嫌な思いをするから。悲しい思いをさせてしまうから。ならば、いろいろなことから関係ないと身を引くのが最善。そうやって生きてきた。
そう、俺は部外者なんだ。......帰ろう。今日のことも、女の子のことも忘れよう。
「失礼、しました......っ」
去り際、女の子が発した「おとーさん、ごめんなさい......」といううわごとが耳について離れなかった。